アメリカおよび同盟国の軍事力を単純に合計すれば、中国の武力に対抗することは難しくない。しかし、中国に近い台湾が戦場となったならば、いかに多くを現地に配備できるかという視点において、中国に一方的に分があると専門家らはみている。このため記事は、「仮に中国がこの島を手に入れようと決意を固めたならば、おそらくそれは可能だ」と論じている。
CNNは、ワシントンD.C.に拠点を置くシンクタンク「新アメリカ安全保障センター」が最近行った台湾有事の戦局シミュレーションを取り上げている。この机上分析は、アメリカ空軍が台湾有事の際の航空戦力として、主に約800キロ離れたフィリピンからの出撃に頼らざるを得ないとの前提に立ったものだ。このような見方をするのは、同シンクタンクにとどまらない。
米空軍本部で戦略・統合・要求担当副参謀長を務めるクリントン・ヒノテ中将はCNNに対し、米軍が「距離の呪縛」に直面することになるだろうと認めている。
台湾海軍の元トップ「われわれに勝機はまったくない」
別の米有力シンクタンクである大西洋評議会も、同様の分析を示している。台湾での軍事衝突は中国にとっての「ホーム戦」、アメリカとその同盟国にとっては「アウェー戦」になるとの指摘だ。
「地理的な形成不利、および長距離の通信体制を埋め合わせるため、多大なリソースが必要となるだろう」と同機構は述べ、アメリカにとって厳しい戦いになるとの見方を示した。
米軍が距離の壁に阻まれれば、当事者国同士の兵力がものをいうことになる。AFP通信は米国防省のデータをもとに、中台間には圧倒的な兵力差が存在すると指摘している。
陸軍兵の数は台湾の9万人弱に対して中国が100万人以上、戦車は800両対6300両、戦闘機は400機対1600機と、4~11倍の開きがある状態だ。台湾海軍の元トップである李喜明元台湾海軍参謀総長はAFP通信に対し、「軍事的な直接対決となれば、われわれに勝機はまったくない」との厳しい認識を示した。
アジア太平洋外交に特化した米シンクタンク「プロジェクト2049研究所」のエリック・リー助手研究員は、米ナショナル・インタレスト誌への寄稿を通じ、台湾側の防衛設計を明かしている。
それによると台湾側は、まずは中国人民解放軍が「壊滅的なミサイル攻撃」を実施し、追って「水陸両面での総力的な侵攻」に出るシナリオを想定している模様だ。台湾側が応戦に使えるミサイルは数日で払底し、中国軍に有利な進軍を許すおそれがある、と氏は指摘している。
防衛に有利な台湾の地形
ただし、本格的な侵攻となれば、中国側も相当な犠牲の覚悟を強いられる。武力衝突では一般に、攻撃側が防衛側を落とすためには3倍の能力が必要だとされる。中国側としても余裕の制圧とはならず、相当な犠牲を強いられることになるだろう。このため大西洋評議会は、中国が直ちに武力行使に及ぶことはないと分析している。