「いまは明日の計画しか立てられません」
バロック様式の教会や石畳の歩道が並ぶリビウの歴史地区群は1998年にユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産に登録されている。街のあちこちの重要な彫像は緩衝材や耐火材で守られていた。イワン・フランコ公園を歩いている時、もはや「日常」化した空襲警報が鳴り響いた。入り口に土嚢が積み上げられた地下壕の周りに何人かが集まってきた。
大半の市民は何事もないように平然と歩いている。試しに地下壕の中に入ってみると、真っ暗で何も見えなかった。外は摂氏30度を超える暑さなのに、中はひんやりとしていた。トンネルの中で不安そうに言葉を交わす家族もいた。2014年のロシアによるクリミア侵攻からすでに8年が経ち、戦火は一時、首都キーウに迫り、いま戦線は東部に集中している。
ドラッチさんに戦争はいつまで続くと思うか尋ねてみた。「そのことについては一切、考えていません。私の態度はシンプルです。戦争は明日終わるかもしれないし、5年後に終わるかもしれない。つまり私には明日の計画があるだけです。欧州をはじめ、みんなが私たちをサポートしてくれています。私たちはみんな戦争に備えるべきなのです」
東部ドネツクからリビウに逃れてきたオクサナさんとアプテムさん母子も「月2000ウクライナ・グリブナ(約9100円)の政府援助も3カ月で切れます。いまは明日の計画しか立てられません」と漏らした。ウクライナへの支援疲れが次第に欧州にも広がり始めている。だからこそ私たちはウクライナの声に耳を傾けるべきだ。
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