ビデオ判定とSNS時代に、もう言い逃れはできない
審判関係のトラブルが話題になると、「感情で判定している」などとSNSに書かれることも多い。しかし、プロの審判で、感情で判定する者など一人もいない。ゲームをコントロールする方法として、あるときは怖い顔を作って選手や監督に対峙し、あるときは抗議に負けじと激しい口調で応戦することもあるというだけだ。過去のさまざまな事例に基づいて現在ではあらゆる行動がマニュアル化されており、皆それに従っている。
ただ、ビデオ判定の確立とSNS時代の到来によって、野球の世界も大きく変わってきた。
100年前の野球では、審判の判定が正しいか間違っているか証明する術はなく、審判の判定が絶対ということにせざるを得なかった。
その後、テレビ中継が始まると、ジャッジの誤りが明らかになることも出てきたが、それでも審判の判定は守られ続けてきた。しかし、それも20世紀までの話だ。21世紀になると映像技術は飛躍的に進歩し、プロ野球は全試合中継が当たり前になった。さらにSNS時代がやってきて、誰でもいつでもプレー動画を撮影してアップロードできるようになっている。もう言い逃れはできなくなった。
「間違いを認めてはいけない」審判の常識が変わる
MLBではチャレンジが導入される数年前から、審判が試合後にミスジャッジを認め、記者会見を開くケースが増えていた。チャレンジ制度の確立によって、このような記者会見は再びなくなったが、間違いを認めてはいけないとされていた野球の審判にとって、明らかに新たな時代が到来したと感じた。
筆者はビデオ判定による判定の訂正は大いに賛成の立場だ。私も含めて世の中のほとんどの野球審判はビデオ判定がない世界でジャッジをしている。その瞬間に起こる事象に対して見たままをジャッジしたつもりでも、それが正しいかどうかは分からない。誰も助けてはくれないし、一度言ったことを引っ込めるわけにもいかない。どんなに審判仲間がいても、プレーヤーと一緒に試合を作っていても、ジャッジする行為については本当に孤独なのだ。