佐々木投手の態度はデモンストレーションにきわめて近い

翻って、白井球審と佐々木投手の一件である。佐々木投手の一連の態度はデモンストレーションにきわめて近い。これに対して毅然とひと言モノ申しておかなければならぬというのは審判として当然の反応だ。なお、今回の件で、審判に関係する規則のひとつである8.02(a)【原注】を引用して白井球審の動きを説明する人も散見されたが、私はあまり賛成できない。

公認野球規則8.02
(a)【原注】ボール、ストライクの判定について異議を唱えるためにプレーヤーが守備位置または塁を離れたり、監督またはコーチがベンチまたはコーチスボックスを離れることは許されない。もし、宣告に異議を唱えるために本塁に向かってスタートすれば、警告が発せられる。警告にもかかわらず本塁に近づけば、試合から除かれる。

問題のケースでは、佐々木投手は決して審判に近づき続けてはいない。数歩踏み出してすぐやめている。もし、8.02(a)【原注】に基づく警告なら、「近付いてはいけない」と手のひらを向けて制止するのが正しいやり方だ。

5月15日に白井球審がレアード選手を退場にしたときは、三振の判定に不満でクレームをつけるレアード選手に対して、まずこのポーズで抗議を拒絶していた。前述の通り佐々木投手は何歩か踏み出してやめたのだから、それをつかまえて突っかかっていったら、それは審判側が明らかにやりすぎだ。

判定が間違っていれば審判を侮辱していいことにはならない

公認野球規則6.04
競技中のプレーヤーの禁止事項
(a)監督、プレーヤー、控えのプレーヤー、コーチ、トレーナーおよびバットボーイは、どんなときでも、ベンチ、コーチスボックス、その他競技場のどの場所からでも、次のことをしてはならない。
(1)言葉、サインを用いて、観衆を騒ぎ立たせるようあおったり、あおろうとすること。
(2)どんな方法であろうとも、相手チームのプレーヤー、審判員または観衆に対して、悪口をいったりまたは暴言を吐くこと。(後略)

今回の問題のポイントはデモンストレーションに対する戒めなのである。審判を侮辱する行為に対しては、断固とした態度で臨む。判定が正しい・間違っているということは関係ない。判定が間違っているから審判を侮辱していいということにはならない。

白井球審は、審判マスクを外してタイムをかけて佐々木投手のほうに向かっていった。マスクを外すのは、強い態度で注意をするという行為を表すための所作だと審判学校で教わる。白井審判は、これまで教わってきた通りのことをしただけなのだ。