「損で孤独な役回り」は終わりつつある
私はルートインBCリーグで審判を務めていた2014年に、当時の審判部長が「間違ったジャッジはどんどん訂正して構わない」という方針を掲げていたので、実際に何度かクルーのミスジャッジを訂正したことがある。誰が見ても明らかなノーキャッチをダイレクト捕球と判定したようなケースでは積極的に訂正し、クルーチーフという立場でマイクを握ってお詫びとともに訂正を発表したものだった。手前味噌だが、まだNPBでもビデオ判定に消極的な意見が多かった時代に、画期的なことだったと思う。
審判は正しいジャッジをして当たり前とされて、普通の人間なら誰でもする「失敗」を許されず、ちょっとしたミスでも罵詈雑言を浴びせられる損な役回りである。しかし、グラウンドの中で誰も助けてくれない孤独者であった時代は終わった。必要以上にチームに対して攻撃的になる必要もない。間違いの訂正も可能になり、より良い試合進行を実現できるようになってきた。
だからこそ、規則の精神をあらためて思い起こし、審判のジャッジで試合を進めるという原則を徹底してほしいと思う。片方のチームと、もう一方のチームと、そして審判チームとが、お互いにリスペクトし合いながら試合を形作っていく。今こそ、そんな新しい野球の姿を実現させていけるよう努力していく時期に来ていると思う。