冷凍チャーハンが学校近くの店舗で売れていた
セブン‐イレブンでの例を2つ紹介しましょう。
1つ目は、2018年11月に発売され、ヒット商品となったカップ入りの冷凍チャーハン「カップごはん」シリーズの開発の経緯です。
この新商品開発も、商品開発本部の担当者が、販売中の商品である一人前の袋入りチャーハンのPOS(販売時点情報管理)データを読んでいて、不思議な数字を見つけたことがきっかけでした。
学校の近くにある店舗に限って、その商品が売り上げ上位に入っていたのです。
このデータは何を意味するのか。不思議な数字の理由を知るため、担当者が現場の店舗に出かけてみると、そこには下校途中の学生たちが袋入りの冷凍チャーハンを店頭のレンジで温め、スプーンで食べている光景がありました。
「冷凍食品=家で食べる」常識を覆したカップの開発
学生に聞くと、「おにぎり2個より安くてコストパフォーマンスがいい」「熱々のが食べられる」とのことでした。
学生たちは、袋入りチャーハンに、売り手が想像もしていなかった体験価値を見出していたのです。
そこで、担当者は、「カップ入りの冷凍チャーハンを開発すれば、チャーハンを自宅以外で食べるという潜在的ニーズを掘り起こせるのではないか」と仮説を立て、冷凍食品会社と交渉して発売にこぎ着けました。
その結果、いままで冷凍食品の需要が少なかったオフィス街の店舗でも、ビジネスマンが昼食に購入するという新しい消費スタイルを引き出すことに成功したのです。このヒットが評価され、担当者はビジネス系ウェブサイトが革新的なマーケターを表彰する「マーケター・オブ・ザ・イヤー」に選ばれました。
担当者が売り手の発想で「冷凍食品=家で食べる」という常識や固定観念にとらわれたままであったら、データを見ても“異変”に気づかず、新商品開発に挑戦することもなかったでしょう。