学校の夏休みに合わせて教師も2カ月の休暇を取る
そして教師のワークライフバランスで重要なのは、学校の夏休みが2カ月半あり、教師も2カ月休みを取ることだ。「給料はそれほど高いとはいえないが、教師の職の良いところは休みが長いこと」というのはフィンランドでは一般的な認識だ。
同時に教師という職は、肉体的にも精神的にも重労働だと理解されていて、長い休みは当然だとも皆が感じている。きっちり休むからこそ、毎日子どもと向き合い、充実した授業ができる。それに教師も自分で勉強する時間がなければ良い授業はできない。教師のワークライフバランスの実現は、子どもたちのために重要なのだ。
ワークライフバランスやウェルビーイングを大切にするフィンランドでは、教師も例外ではなく、より良い仕事をするためにも仕事以外の時間を大切にすることは当然だと広く認識されている。だからプライベートの時間はできるだけ削らず、勤務時間内に最善を尽くせばいいと考えられているわけだ。
フィンランドのコロナ禍の遠隔授業
フィンランドも2020年春、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、一時期、小中高全ての学校で対面授業が中止になり、遠隔授業となった。それ以前にも大学レベルではオンラインコースがいくつか行われていたが、義務教育では初めての試みだった。しかし、対面授業中止の要請が出て、たった2日後には遠隔授業が全国で始まっている。
もちろん教師も親も子どもたちもとまどいがなかったわけではない。ただ、子どもには教育を受ける権利があり、子どもの1日の生活リズムを守ることが緊急事態にこそ大切だと考えられ、すぐに遠隔授業が始まったのだった。
全ての子どもがタブレットやパソコンを持っていたわけではないので、当初はオンライン授業ができたクラスとできなかったところがある。ツールがない家庭には学校から貸し出したり、地元企業からの寄付でカバーしたりしたところもある。
ただ、フィンランドの場合はほとんどの子どもたちが小学校1年から自分の携帯を持っている。加えて、前述の電子連絡帳が普及しているので、日々の時間割や課題はオンラインで連絡が済む。現場に裁量があるからこそ、学校や教師が素早く判断して、可能なことから迅速に始めることができた。