共同購入でより安く、確実にエネルギーを確保する狙いだが…

2本目の柱である「EUエネルギープラットフォーム」は、3月23日に発表された政策文書(Security of supply and affordable energy prices)の中でその構想が提唱されていた。EU加盟国がガスや水素を共同で購入すれば、産出国との間で価格交渉が容易になると同時に、加盟国間で調達競争が起きる事態を回避できるというわけだ。

小国が多いヨーロッパでは、一国一国が個々に自立して動くよりも、協調して動く方が国際的なプレゼンスが向上するため、合理的である。この発想は、欧州統合の理念そのものだ。ロシアによるウクライナ侵攻は安全保障に関してヨーロッパの連帯を強めるきっかけとなったが、エネルギーに関しても同様と言えよう。

また今回の「リパワーEU」で明らかになった構想によれば、エネルギープラットフォームは基本的にEU加盟国の組織ではあるものの、近隣の諸国との協調も図るようだ。具体的には、セルビアなど西バルカン諸国と、ウクライナやモルドバ、ジョージアといったEUに加盟申請をした旧ソ連諸国との間で、協力関係を強化する。

こうした国々は、EUとEU未加盟の諸国によって構成される欧州エネルギー共同体(かつての南東欧エネルギー共同体)にすでに加盟している。EU加盟交渉そのものは複雑な過程を追うため長期を要するプロセスだが、少なくともエネルギー政策に関しては汎ヨーロッパ的な動きを加速させたいというのが欧州委員会の意向だろう。

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足を引っ張る「ヨーロッパの優等生・ドイツ」

その経済的な成否はともかくとして、EUエネルギープラットフォーム構想そのものは、進捗が滞っていた欧州統合の深化につながる性格を持つ。

EU各国がこれをきっかけに政治的にまとまっていくことができるならば、それはそれとして欧州統合の歴史的な文脈に即せば、意義の深い取り組みであると肯定的に評価していいはずだ。

ここで注意したいのが、ドイツのスタンスだ。欧州委員会は2022年2月2日、持続可能な経済活動を分類するEUタクソノミーにおいて、天然ガスと原子力による発電を一定の条件下で「カーボンニュートラルへの移行期に必要な経済活動」に含めると発表した。しかしドイツのショルツ政権は、この方針に反対する構えを崩していない。