エネルギーの脱ロシアに舵を切るEUの“悩みの種”

欧州連合(EU)の執行部局である欧州委員会は5月18日、ロシア産化石燃料依存からの脱却計画である「リパワーEU」(3月8日に政策文書を公表)の詳細を公表、2030年の温室効果ガス削減目標(1990年対比で55%以上の削減)を実現するための政策パッケージ「Fit for 55」を土台に、以下の3本柱を定めた。

ドイツのオラフ・ショルツ首相
写真=ANP/時事通信フォト
EU首脳会議で報道陣に対し演説するドイツのオラフ・ショルツ首相=2022年5月30日、ブリュッセル

1本目の柱は省エネである。欧州委員会は2030年までにエネルギー効率を、2020年対比で13%引き上げる(従来の「Fit for 55」では9%)目標を設定、経済性に優れた暖房設備などに対する購入支援策(付加価値税の引き下げなど)の実施や各国で化石燃料削減に向けた行動計画を策定することを提案している。

2本目の柱はエネルギー供給の多様化だ。主に天然ガスの輸入元の多角化と、供給国との友好関係の構築に向けた戦略に関する文書(EU external energy engagement in a changing world)を公表、さらに加盟国間でエネルギーを共同して調達するための組織として「EUエネルギープラットフォーム」を創設するとした。

3本目の柱は再エネへの移行の加速である。「Fit for 55」で定めた2030年時点の最終エネルギー消費に占める再エネ比率を40%から45%に引き上げるとともに、風力発電所の建設手続きの短期化、建物への太陽光パネルの設置義務付けなどを実施することを提案。同時に、新たに水素やバイオメタンの利用の促進などをも企図している。

なお日本では、東京都が一定の条件の下で、新築の建物に太陽光パネルの設置を義務付けようとしている。賛否のほどはさておき、それと同じような取り組みを欧州委員会も実施しようとしていることになる。具体的には、新築の商業・公共施設は2026年まで(既存の施設は2027年まで)、29年までに新築住宅の屋根への太陽光パネルの設置を義務付ける方針のようだ。