ワグナー・グループのオーナーはプーチン側近の政商
ワグナー・グループの起源を遡ると、もともとはロシアの総合警備会社「モラン・セキュリティ・グループ」を母体に、2013年に戦時下のシリアで活動するために設立された民間軍事会社「スラブ軍団」(本社は香港)だった。当時、ロシアはシリアのアサド独裁政権を支援してはいたが、まだ直接の軍事介入をしていなかった。
翌2014年、シリアで活動するさらに本格的な傭兵会社として、スラブ軍団を拡大するかたちで、ワグナー・グループが設立された。指揮官は元GRU特殊部隊中佐のドミトリー・ウトキンだったが、彼はプーチン側近の政商エフゲニー・プリゴジンに近い立場の人間だった。その設立・運営資金はプリゴジンが出している。つまりワグナー・グループのオーナーは、プーチン側近の政商というわけである。
ワグナー・グループは2014年、ウクライナ紛争にも進出している。ウクライナでも表向きは、ロシア軍が活動していないことになっていたため、こうした部隊がウラで使うには便利だったのだ。
シリアではアサド政権軍とともに地上戦を担当
その後、ロシアは2015年9月からシリアに直接、軍事介入するが、ワグナー・グループはそのままシリア各地に投入された。ロシア正規軍は航空機による無差別空爆などを主に行っていたが、ワグナー・グループはアサド政権軍とともに地上戦を担当した。もちろんシリア駐留ロシア軍司令部の指揮下にある。
2018年2月7日、このワグナー・グループが主導するロシア=アサド政権合同軍が、米軍が支援するクルド人部隊を襲撃し、米軍の報復空爆によりワグナー・グループのロシア人兵士、数十人以上が戦死(300人という情報も)するという事件があった。先に手を出したのはワグナー・グループのほうだが、この作戦の前後に、ワグナー・グループとプリゴジン、それにクレムリンの間で頻繁に連絡があったとみられる。
なお、プリゴジンはロシア軍(およびワグナー・グループ)の支援でアサド政権がIS(イスラム国)から奪ったシリア東部の油田地帯の利権を手中にしたとも報じられている。このプリゴジンは、ロシアのSNS不正操作組織「インターネット・リサーチ・エージェンシー」(IRA)のオーナーでもある。つまり、クレムリンに直結するロシア情報機関の代理人のような立場の人物と言っていいだろう。