反プーチン派の暗殺を担う連邦保安庁(FSB)

このうち、反プーチン派に対する暗殺は主にFSBが行っているとみられる。国内にとどまらず海外での暗殺も、おそらくFSBが実行している。庁内に破壊工作専門セクションがあるのだ。

黒井文太郎『プーチンの正体』(宝島社新書)
黒井文太郎『プーチンの正体』(宝島社新書)

ただ、攻撃の実行役としては、FSB破壊工作部門の手配でチェチェン系の下請け人脈が代行するケースもあるようだ。とくに疑われているのは、プーチン政権と癒着しているチェチェン共和国首長のラムザン・カディロフの配下グループだ。

他方、SVRは現在、外国での情報収集活動を主に行っており、近年はこうした荒っぽい暗殺はあまり聞かない。ただ、SVRにも破壊工作を行うセクションは小規模ながらある。

SVRは世界中にスパイ網を構築していて、もちろん日本にもロシア大使館員、通商代表部員などの身分(冷戦時代は国営メディア特派員でも)で工作員を送り込み、情報収集活動をしている。ときおり日本の外事警察に摘発されるが、暗殺などはこれまで報告されていない。ただ、北朝鮮の工作機関のように、実在の日本人に成りすます「背乗り」を行っていた事例が判明しているので、その人物に何らかの危害が加えられた可能性はある。

GRUも世界中でスパイ活動をしている。日本でもいまだに活動しており、こちらもときおり外事警察が摘発している。日本では暗殺などの破壊工作の形跡はないが、ロシアの周辺国、あるいはロシア軍が介入しているような地域では、特殊作戦・破壊工作も行っている。とくにロシア軍が介入しているウクライナとシリアでは、GRUも秘密作戦を活発に行ってきたことがわかっている。

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