たが、せっかくクルマをきれいにしても、数カ月後にはまた汚れて店にやってくる。その状況を何とか解決したかった村上さんは、顧客自身で日ごろからメンテナンスしてもらう必要があると感じた。

顧客には、実際に洗い方のレクチャーなどもしていたが、その場で教えてもすぐに忘れてしまう。そこで、マニュアル動画を作成して、いつでもどこでも顧客が見られるようにした。

動画は随時YouTubeで公開していった。すると、徐々に顧客以外のユーザーも閲覧するようになった。せっかくならばもっと多くの人に見てもらいたいという欲求が沸いた村上さんは、人気のYouTube動画などを参考にしながら、キャプチャー画像を工夫したり、独特のキャラを演じてみたりと、見てもらえる動画を意識するようにした。

「キャプチャーの文字の色を赤にしたり、ガチという言葉を入れたりしました。あとは、キレ芸みたいに、本音をズバズバ言いながら洗車しましたね」

ただ、そんなに甘くはなく、従来の動画と比べて微増程度だった。肩を落とした村上さんだったが、公開して半月ほど経ったある日、いきなりスマートフォンの通知が止まらなくなった。YouTubeのおすすめリストに入り、アクセス数が爆発的に伸びたのだ。それが冒頭に紹介した動画である。

これをきっかけに動画を出せばスマッシュヒットを飛ばすようになり、人気チャンネルの仲間入りを果たした。村上さん自身も、洗車ユーチューバーとして知られる存在になった。

洗車ユーチューバーが増えすぎた

YouTubeに投稿した動画がヒットしたことで会社の知名度は上がった。そして同社の洗車関連用品に対する引き合いも強まった。

ただし当初、村上さんはEC(インターネット通信販売)によって広く販売することに難色を示していた。

「今までは店舗でお客さんのクルマをきれいにして、そのまま長く乗ってもらうために、日々の手入れ方法を教えていました。例えるならば、歯医者さんが歯をきれいにして、毎日の歯磨きのやり方を指導するのと同じ。それと一緒に良質な歯磨きと歯ブラシを売ってあげるわけです。僕はそこにこだわっていました。誰にでもというのではなく、きちんと息のかかったお客さんにしか売りたくなかった」

筆者撮影
洗車関連用品