ウィーワーク、ペイティーエム…株価が相次ぎ下落

しかし、需要の飽和と競争激化によって投資の効果が発現しづらくなっている。追い打ちをかけるように米国ではGAFAの業績拡大が鈍化し、世界全体でIT先端分野の成長期待は低下し先行き不透明感が高まった。有力なIT先端企業に比べて経営体力が小さい分、スタートアップ企業の資金調達コストは急速に増え、事業運営の効率性が鈍化している。グラブ以外にも、ソフトバンクグループが出資する米ウィーワーク(シェアオフィス運営企業)やペイティーエム(インドのモバイル決済大手)の株価が下落した。

また、中国では共産党政権が共同富裕を掲げてIT先端企業への締め付けを強めた。2021年6月に共産党政権の警告を無視してニューヨーク証券取引所に株式を上場したディディ(滴滴出行)は当局から安全保障を理由に調査され、中国国内でアプリの新規ダウンロードができなくなった。収益が急減する一方でデータ管理やギグワーカーの保護への支出が急増し、2021年12月期決算は500億元(約1兆円)の最終赤字に陥った。

低金利環境にあやかってきた企業ほどピンチ

2つ目の変化として、スタートアップ企業の急成長を支えた世界の緩和的な金融環境が急速に引き締められる。新型コロナウイルスの感染再拡大やウクライナ危機などによって世界のインフレ懸念は急上昇している。連邦準備制度理事会(FRB)や英中央銀行(BOE)、欧州中央銀行(ECB)などはインフレ退治に必死だ。世界的に金利上昇圧力が高まっている。

特に、米国ではFRB関係者から住宅ローン担保証券(MBS)の売却も検討しなければならないとの見解が示されはじめた。物価の上振れリスクは上昇しており、FRB内部では金融政策の正常化をさらに加速し、迅速に引き締めなければならないとの危機感が非常に強い。

世界的に金利は一段と上昇するだろう。それによって、企業が永続的に生み出すと予想されるフリーキャッシュフローの割引現在価値はより小さくなる。低金利環境が続くとの楽観と、高い成長への強い期待が先行して株価が大きく上昇した企業ほど、株価の下落圧力は強まる。