日本の緩和策は功を奏するか
これらの世界の多くの地域での経済減速の中で、日本は従来通りの緩和策を続けることを日銀は明言しています。
ひとつには、景気の足腰が弱く、物価の上昇が他国に比べて抑え込まれているからです。3月で消費者物価上昇率は前年比で0.8%、4月に前年の携帯料金下げの影響が消えても2%程度と予測されています。日銀も、景気が弱いので緩和を続けると明言しています。
しかし、これにはリスクもあります。企業間取引の物価を表す国内企業物価は3月で前年比9.5%の上昇です。企業経営に関わっている方は仕入れの値上がりを痛切に実感されていると思います。輸入物価も前年比で3割以上の上昇が続いています。
つまり、仕入れの上昇を最終消費財に十分に転嫁できない状況が続いています。これでは、企業業績は改善どころか悪化します。これは日本固有の理由です。
こうした中、世界の主要国と全く違う緩和策をとる日銀ですが、これが景気を下支えすればいいのですが、インフレ、とくに企業物価の上昇を野放しにして、景気はさほど浮上もしないということも考えられます。
そして、今後は、先に述べたような米国、中国の景気減速が待っているわけです。
コロナも十分に収束したわけではありません。ウクライナ情勢という変数も加わって、残念ながら日本経済の先行きは当面厳しくなると言わざるをえません。
では、国民の生活はどのような影響を受けるでしょうか。
前述したように、日本経済はもともと足腰が弱い上に、資源高や円安もあり、最終消費財の価格はある程度は上昇せざるをえません。ただ企業は仕入れ価格上昇分をすべて最終価格に転嫁できないわけですから、利益は減少します。そのしわ寄せの一部は、給与にいきます。ビジネスパーソンの給与は伸び悩み、上がらない状況が続くと考えるのが妥当でしょう。
米国ほどのインフレではないものの物価は上昇し、給与は上がらない。消費はさらに落ち込むということです。場合によっては、不況下のインフレという「スタグフレーション」に陥るかもしれません。そうなれば、とくに、所得の低い人たちへの影響は計り知れないものになるおそれがあります。
「失われた30年」が35年、40年とさらに延びることはない、と断言できる人はいないはずです。