「できるかどうか」ではなく「面白いかどうか」

上司は部下の提案に対して5割はそのまま「いいんじゃない、進めたら?」というべきです。3割くらいは「もう少しこうしたら」と少し調整する。でも結果、通してあげる。2割くらいは「ちょっとダメかな?」でいいと思います。

木谷高明『すべてのジャンルはマニアが潰す 会社を2度上場させた規格外の哲学』(ホビージャパン)

つまりマネージャーなど上司は、部下の提案を8割は肯定できる人でなければならない。そうでなければ部下のやる気を削ぎ続けます。ただ、実際はそううまくはいかない。「ちょっとダメかな」が増えていく。これは注意してもなかなか直るものでもありません。

先日、社員を面接していて、ある部署の企画会議で提案をすると「できるかどうか」の議論が始まってしまうという話を耳にしました。

本当であれば、我々はエンタメ企業なのですから、そこは「面白い、でもどうやってやろう」「でもここは難しいな。じゃあこうしよう」という「面白いかどうか?」の評価から始まるべきです。「できるかどうか」の議論から始めると大体否定されて、ほぼ「それは難しい」という結論で終わってしまう。だからこそ、提案する気が失われてしまうという話でした。

会社側が考えて適材適所に配置したつもりでもこういうことが頻繁に起こります。

ブシロードの場合、特にカードゲームの部署は難しいですね。カードゲームのプレイは、まずミスをなくすところから始めなければなりません。囲碁や将棋、麻雀と同じで、ミスをなくせば勝てるわけです。逆にミスをする人は絶対に勝てない。さらにゲーム自体を作るにはルール上のミスが出ないように、ゲームが壊れるような効果を排除したり、表記間違いをなくしたり、徹底して間違いを探して排除する作業にも力を入れなければいけません。

そういった仕事に携わっていると、どうしても日々の発想もそのように偏りがちです。過剰に失敗やミスに敏感になってしまうんです。

「とりあえずやってみて」の一言が大切になる

ただ我々が作っているものは競技以前にエンタメです。それを忘れてはいけません。幹部研修でも、そこを理解できている人間に話をさせたりしているのですが、伝わらない人にはなかなか伝わらない。

そうして、部下の意見を常に打ち消し続けていくとどうなるか。部下は、お客さんや店舗さん向けではなく、その上司が通すような提案を考えはじめます。提案自体が、お客さんや店舗さんに向いたものではなく、上司のチェックを通すためにはどうしたらいいか? ということが主体になってしまうのです。それでは何のための提案かわからなくなってきます。

そうかと思うと「とりあえずやってみ。失敗したら俺が責任持つから」という言葉を投げかける上司もいる。

社員との面談で、その言葉があったから頑張れたと話してくれる人もいて、ブシロードだけ見ても対応はリーダーによってさまざまです。ですが、部下を委縮させずに提案をどんどん引き出すにはどんなリーダーであるべきか、常に考えさせる努力をリーダーには求めなくてはなりません。

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