日本最大のプロレス団体「新日本プロレス」は、かつて低迷していた。しかし2012年にブシロードの傘下となり、経営はV字回復。売上高は過去最高を更新するようになった。ブシロードの木谷高明会長は「私は新日本プロレスを買収したとき、『すべてのジャンルはマニアが潰す』と言った。この考えは今も変わらない」という――。

※本稿は、木谷高明『すべてのジャンルはマニアが潰す 〜会社を2度上場させた規格外の哲学〜』(ホビージャパン)の一部を再編集したものです。

新日本プロレスの会見で話すブシロードの木谷高明社長(前列中央)。同左は坂口征二相談役、同右はユークスの谷口行規社長=2012年1月31日、明治記念館
写真=日刊スポーツ/アフロ
新日本プロレスの会見で話すブシロードの木谷高明社長(前列中央)。同左は坂口征二相談役、同右はユークスの谷口行規社長=2012年1月31日、明治記念館

なぜ「すべてのジャンルはマニアが潰す」と言ったか

すべてのジャンルはマニアが潰す。これまでの私の発言の中で最も物議を醸し、また最も広く知られている言葉です。一部の熱狂的なファンの要望を受け入れ続けると、新規ユーザーが入りづらくなり、その結果ジャンルは衰退してしまう、ということを指摘しました。

一番初めにこの言葉を使ったのは、新日本プロレスがブシロードのグループ会社になったときでした。当時は新日本プロレスを、前向きに大きく変化させなければいけませんでした。そのために外野の声をいったんシャットアウトしたかったのです。

ある程度の反発は予想していましたが、要はコアなファンに「しばらくは口出ししないで見守っていてほしい」というお願いだったわけです。

その頃は新日本プロレスに限らず、すべてのプロレスファンが「このままでは日本のプロレスはなくなってしまうかもしれない」という危機感を持っていました。ですので、今振り返ると、わざわざこんな挑発的な言葉を使わなくてもよかったのかもしれません。ともあれファンの方々は、これ以降の新日本プロレスの改革を温かく見守ってくれました。その後の新日本プロレスの大躍進は、皆さんがご存じの通りです。