人の移動がまったく起きない組織はどこかおかしい

勤続年数の長い社員が多いことや、まったく人が辞めないことを自慢する会社がありますが、私はそれはおかしいと思っています。人によっては他にもやりたいことはあるだろうし、仕事をやりたいと思っていた人が、子供ができて自分の時間、家族との時間が欲しいと思うこともあるかもしれない。

もしくは、ある日突然やり甲斐は二の次で、とにかく給料がもっと欲しいと思うかもしれない。東京じゃなくて地方に住みたい、と考え始める人もいるでしょう。これまで仕事をバリバリやっていた人が、急に会社を辞めるということは多々あります。みんな人間なのですから時間と共に変わっていく。まったく人の移動が起きないという組織は逆にどこかおかしいでしょう。

会社は、年間5~10%くらいの離職率があってちょうどいいと考えています。ただ、15%を超えたらまずい。それ以上だと組織に問題があると思ったほうがいいでしょう。

海外では社員がお互いの給料を知っている

もちろん、これは日本の場合で、海外では離職率はもっと高くなります。なぜ海外では離職率が高いかというと、基本的に転職しなければ給料が上がらないことが多いからです。仕事を変えて上がり、また仕事を変えて上がり……ということを繰り返すしか給料が上がらない仕組みになっています。ですから有名な会社ほど、その会社での社歴が短い人が多いんです。

意外に思われるかもしれませんが、外国人はすごくおしゃべりです。ブシロードのシンガポールの現地法人でも社員はみんなお互いの給料を知っていました。そうすると「自分の給料がこんなに低いなんて会社はおかしい!」という話になります。ですから日本のマネジメントと海外のマネジメントは違うものになります。

私は2014年~2018年の間、日本を離れ、拠点をシンガポールに置いていました。私が日本に帰国後、1年間シンガポールを任せた中山淳雄さん(現エンタメ社会学者)は、もともとリクルート出身でコンサル業務もやっていたので、そのあたりの交渉が上手です。人事的なマネジメントをテクニカルにやっていく。理論としてあるものをそのまま適用させる。これがシンガポールではとても有効でした。お互いの疑問点を晒しあったうえできちんとディスカッションをしてセオリー通りに進めるのです。

何事も淡々と感情を挟まないで行動するのが向こうでの常識です。日本の場合はどうしても情が残ってしまう。ここは日本の悪いところだと思う反面、良さでもあると私は思っています。ただ最近は、日本でも良い意味で人事的マネジメントはテクニカルになってきたと思います。