誰よりも詳しいからこそ供給サイドはマニア化しやすい

何かを大きく改革したいときには、いろんな声があると邪魔になります。声を聞いているうちに角が取れてしまって、「それは改革ではなく多少の改善でしょ」といった結果になってしまうことはよくあります。特に政治の世界では、残念なことですが頻発していますよね。

最近は「すべてのジャンルはマニアが潰す」という言葉は、商品を買ったりサービスを受ける側だけではなく、商品やサービスを提供する側にも言えることだと強く感じています。

商品やサービスを提供する側は、仕事として取り組むわけですから、その商品やサービスにずっと向き合っているわけです。だから必然的に誰よりも詳しくなります。

「こうすればもっと便利になる」「こうしたほうが面白い」「こうすれば使いやすくなる」といったアイデアも、すでにマニアの考え方になっている可能性があります。ユーザーからしてみたら、初めて見るサービスかもしれないわけです。それなのに過剰機能・過剰サービスが起こってしまうのは、供給サイドがマニア化してしまうからです。商品やサービスを受ける側の気持ちを忘れて、提供する側が自己満足に陥っているのです。

ですから常に大事なのは、商品やサービスを提供する側の人間が、商品やサービスを受ける側の立場に立って考えることです。

「自分たちは正しい」という前提に立っていないか

新日本プロレスに関しても、まったく同じことが言えます。自分たちはマニア化してはいないか、そして自分たちがやってきたことが正しいという前提に物事を組み立ててはいないか、改めて考え直さねばなりません。

これまでやってきたことが正しかったとしても、10年前にその正しさが100だとしたら、今は50になっているかもしれない。マニア化せずに検証を続け、常に改革していく必要があります。新日本プロレスにとっては、現在は過去の10年を見つめ直し、新しい次の10年に向かうための生みの苦しみの時期と考えています。

今は特に変化が激しい時代ですから、マニア化が致命傷になる可能性もあります。マニア化してしまったら、まったくズレたものを世に送り出してしまうかもしれない。供給サイドのマニア化は、ユーザーのマニア化よりも怖い時代になりました。

すべてのジャンルはマニアが潰す。これは商品やサービスに限らず、多くのことに妥当できる現代の真理であると確信しています。