円高・円安は何を基準にしているのか?

自分の関心のある時点の相場と比較している

▼人によって基準が違う

「円高・円安って言うけど、いつと比較して言っているんだろう?」と思ったことはありませんか。円高・円安とは「いつ」を基準にしているのでしょうか。

ハワイから帰ってきた由美さんが、「円高でこんなに安くブランド品が買えたわ!」と喜んでいます。由美さんは学生時代にアメリカ旅行したときと比較して、そう思ったのでしょう。

また、企業の輸出担当者が「円高で困った!」と言ったら、その会社が利益を確保できる為替水準を設定した1年くらい前との比較で、円高を嘆いているはずです。

外貨預金をしている人なら、自分が円で外貨を買って預金した時点と比べて、円高・円安を意識するでしょう。このように、円高・円安は、その人によって起点が異なりますから、統一された基準はありません。

▼固定相場時代の3倍!

金融業界では、1973年に日本の為替制度が固定相場から変動相場に移行したときを起点にしています。73年以降の円相場は上がったり下がったりを繰り返していますが、大きなトレンドとしては、円高・ドル安です。

70年代から80年代半ばまでは、1ドル200~300円の間で上下を繰り返しましたが、85年から一気に円高が進みました。90年前後は円安傾向になりましたが、再び円高になり、94年に初めて1ドル100円を突破。その後は100~150円の間を上下し、リーマンショックが起こった2008年からまた円高に。

新聞やテレビで円高が大きく報じられるのは、過去の史上最高値に迫ったときです。長らく円相場の史上最高値は、1995年4月19日に東京市場でつけた79円75銭でした。それが2011年10月に75円32銭をつけました。そのときには、政府・日銀による為替介入が実施され、12年後半の日銀によるマイナス金利、量的緩和により13年に100円台に戻してからは100~125円で動いています。

1ドル360円の固定相場時代と比べると現在は3倍以上の円高ですが、いまさらそんな過去の数字をもち出す人はいません。自分の関心のある時点の相場と比較して、円高・円安と言っているのです。