大手スーパーをしのぐ生産性の高さ

ひまわり市場は売り場面積170坪です。最近はスーパーであれば標準フォーマットは500坪以上、ドラッグストアは300坪です。それらに比べたら、とても小さなスーパーです。

しかしこの規模で10億円の売り上げをあげているのです。圧倒的に効率のいい、生産性の高いスーパーです。これは他社との比較の中でよく理解することができます。

スーパーの勝ち組の一社、オーケーは業界でも断トツの生産性を誇る企業です。ひまわり市場の500倍の企業規模。

そのオーケーよりは数字は劣るものの、ひまわり市場の坪効率は年々向上し、一坪当たり600万円にも迫る勢いです。一人当たり売上高も2694万円ですから、高い生産性をあげる運営体制になっていることが分かります。

企業が従業員にどれだけ還元しているかを示す指標である労働分配率は50%が標準ですが、同社は驚きの60%(法定福利費も含めたらそれ以上になります)。

業界ではヤオコー(埼玉)が高いと言われていますが、分配率は47.9%(20年度)です。ひまわり市場は頑張れば頑張るほど報われる会社といえます。

立地の悪さにもかかわらず、シェア、生産性、還元率も非常に高い。

お客さんの心をつかんでいるのはなぜなのでしょうか。

特徴① 近隣のスーパーにはない圧倒的な商品力

まず、ひまわり市場は圧倒的に商品力が優れています。

部門の強みとしては、生鮮3品(青果・鮮魚・精肉)が強いというのは食品スーパーとしては当然なのですが、それぞれの部門ごとに強みが明確です。

青果は地元の野菜、週末には地場の有機野菜が2トントラックで届き、即日完売する。

精肉は「鈴栄畜産の渾身 上州牛サーロインステーキ」などの上質な肉がずらりと陳列され、都内の高級スーパーかと思うような品ぞろえ。

鮮魚は甲府の水産市場や豊洲市場、また富山や熊本の浜から1番の物しか仕入れないと豪語。さらにそれを使ったお寿司もずらりと並ぶ。

しかし、これだけではありません。ひまわり市場には、各部門に「圧倒的1番単品」が存在します。圧倒的1番単品とは数量も金額も他を圧倒するほど売れる単品のことです。これが店の売り上げを支えています。

例えば、土日限定の午前・午後50個ずつ販売される「歴史的メンチカツ」(税込486円)は同商品購入目当てに数百人が殺到するので抽選となっています(今年の4月30日、5月1日は道路が渋滞して近隣に迷惑がかかるため販売中止)。

他にも「斉藤さんのきゅうり」や「高森さんのレタス」など生産者の名前が入った野菜、「大源の裏メニュー 秘伝のシウマイ」(389円)、「フジハラの餃子の皮」(203円)など地元人気飲食店の作る総菜、ひまわり市場のオリジナル商品「Volontaロースハム」(669円)など、とにかくよく売れる1番単品が数多くあります。

筆者撮影

わざわざメンマだけを買いに東京からやって来る

一般的な店はこのような商品を店全体で2~3個しか持っていません。ひまわり市場は、どの部門でも「1番単品」を、複数持っているのです。

だから、どの売り場もお客さんでにぎわっています。何か1つが強いのではなく、どの部門にも質の高い商品がそろっているからお客さんが続々とやってきてリピーターになるのです。

実際にこの日は、「東京からメンマを買いに来たんだけど」というお客さんにも私は出会いました。そのメンマは「大源の手作りメンマ」(1パック251円)という商品で、ちょっと厚みのある、口に入れると柔らかいけど適度に歯ごたえがある手作りメンマです。

そのお客さんは本当にメンマだけを買って帰っていきました。

駐車場を見ると、松本、横浜、静岡、練馬ナンバーの車が止まっていて、全体の3割は山梨県外の車でした。

わざわざ、ひまわり市場で買い物をしたくてここを目的地に遠方からやって来るお客さんが毎日いるのです。こんなスーパー、私はコンサルティング人生31年の中で初めて見ました。