70組以上が移住の決め手にしたスーパー「ひまわり市場」
私がその店を知ったのは、たまたま手に取った雑誌でした。
記事には「移住や2拠点生活の下見で、たまたまそのスーパーに立ち寄った客が、こんな楽しくて素晴らしいスーパーがあるのなら……と移住を決めた。そんな人が、知っている限りでも70組以上はいる」と書かれていました(『dancyu』2021年9月号)。
そのスーパーの名前は「ひまわり市場」といいます。
日本百名山の一つにも数えられる八ヶ岳。その南麓の八ヶ岳高原の一角にある小さなローカルスーパーです。調べると、チェーンでもない店に、遠方からわざわざ買い物にくるお客さんで店内はごった返すというのです。
いったいなにが魅力なのか。実際にスーパーに行き、さまざまな角度からひまわり市場を見て、考えました。
小売店にとってかなりの悪い立地だが…
まず、同店の最大の特徴は立地が悪いことです。
最寄り駅である中央線の長坂駅は甲府駅から電車で30分。店までは長坂駅から車でさらに10分以上かかります。
自然豊かな素晴らしい町ですが、周辺は点在する住宅と田んぼと畑ばかり。北杜市の人口が約4万6000人、ひまわり市場がある大泉町が約5000人です。コンビニがギリギリ成り立つくらいの立地で、小売業にとってはまさに悪立地です。
商圏シェア率66.7%という断トツの数字
データをみると、ひまわり市場は、商圏内でダントツのシェアを誇るスーパーでした。
一般的に、小売店のすごさは商圏内シェアに表れます。
何と、ひまわり市場のシェアは66.7%(※)。
シェア法則で言うと55%が相対的独占シェア、74%が独占シェアとされます。このシェアはまさに市場をほぼ独占しているということです。
実際には商圏外からも来店はありますので商圏範囲はもう少しあるとは思いますが、足元の商圏が薄い中でこれだけの売り上げをあげられるというのは現実的にほぼあり得ない数字です。しかしこれが事実なのです。
もちろん大手の優良スーパーと売上高を比較したら、その数字は見劣りします。他社は数千億円、ひまわり市場はおよそ10億円です。その差は歴然。しかしこれを、別の指標で見てみると、ひまわり市場も素晴らしい店であることが分かります。
※ 計算式
① 食品の年間一人当たり消費支出金額は、周辺商品も含めるとおよそ30万円
② 商圏人口 5000人
③ 商圏内需要額=15億円
④ ひまわり市場 年商約10億円
⑤ ひまわり市場商圏内シェア=④÷③×100%=66.7%