スタグフレーション対策には現金

コロナ禍で、日本の貯蓄率が急激に上がっています。

2020年の貯蓄額は、前年の5倍の35.8兆円にも達しました。一律に配られた10万円も、消費には回らずに貯蓄に回ったようです。

なかでも、世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄率は高く、平均が2324万円で、なんと2500万円以上の世帯が3分の1となっています。

これは、至って正常な動きと言えます。

なぜなら、不安定な経済状況の中で、現金の価値が上がっているからです。

食料品やエネルギー価格が上がって、世界的に「インフレ」と言われていますが、インフレになったら上がっていくはずの給料が、日本ではまったく上がっていない状況です。

給料が上がっていないだけでなく、この給料に連動して決まる公的年金の支給額が2021年度は0.1%のマイナスとなり、2022年度も0.4%のマイナスとなりました。年金の額は、3年間の給料の平均で決まるので、来年度の年金額も下がることでしょう。

これまで日本は、給料も下がるけれど物価も下がるというデフレという状況でしたが、この先は、給料が上がらない不況の中で物価だけが上がっていくスタグフレーションという状況に陥っていく可能性があります。

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こうしたなかでは、投資環境も不安定になっていく危険性もあります。

だとしたら、それほど余裕がない普通のご家庭では、イザという時のために、住宅ローンなどの借金があるなら返し、なるべく多く現金を持っておくことです。

「借金返済」は最高の投資

「投資」をする前に、考えなくてはいけないことがあります。それは、住宅ローンなどの「借金」がないかということ。

コロナ禍で、多くの人が生活の不安を感じたことでしょう。この不安を払拭ふっしょくするためには、投資でお金を増やそうと考える前に、住宅ローンなどの借金を減らすことを考えるべきです。

じつは、借金を減らすことは、投資よりも確実に資産を増やし、老後の安心につながります。

今、多くの人が、住宅ローンを35年で組んでいます。しかも、2021年には、融資期間40年という住宅ローンも出てきました。

35年返済の場合、35歳で借りれば返済が終わるのは70歳。40年返済なら、75歳になります。

現在、年金支給年齢は65歳からですから、年金生活の中で住宅ローンを払っていくことになりますが、夫婦2人で20万円程度の年金の中から10万円の住宅ローンを払ってしまっては、生活できません。

ですから、多くの方は、退職金で住宅ローンの残債を返すということになるのでしょうが、そうなると老後に使える退職金が減ってしまって老後が不安になります。

ですから、住宅ローンは、少なくとも年金生活になる前に払い終えておかなくてはなりません。

そのためには、「繰上げ返済」で、残りのローンの期間を短縮しておきましょう。