「賛美する習慣」で日常のストレスは減らせる

これは、自分の嫉妬心に区切りをつけるということでもあります。「あきらめ」に近いかもしれません。悔しい思いもするでしょうが、やはり宇宙規模で見れば大したことではない。むしろ誰であれ常に出会う人を賛美する習慣をつければ、日常のストレスは大幅に減るはずです。

もちろん、賛美されて悪い気のする人はいません。逆に褒め返そうとも思うでしょう。つまりお互いにいい気持ちになって、人間関係も円滑になる。「賛美は人のためならず」と考えてもいいのではないでしょうか。

「他人と比較する習慣」は致命的

ラッセルはまた、〈他人と比較してものを考える習慣は、致命的な習慣である〉とも述べています。これも日常的によくある光景でしょう。

例えば夏休みに家族を連れて熱海に行ったとき、隣の一家がハワイ旅行に出かけていたとしたら、なんとなく負けたような気分になるかもしれません。せっかくの熱海旅行の思い出が、すべて色褪あせて見えたりする……。そういう思考を、ラッセルは〈致命的〉として、〈何でも楽しいことが起これば、目いっぱい楽しむべき〉と断じています。要するに、「人は人、自分は自分」と割り切ればいいということです。

これはけっして難しいことではありません。例えばイヌやネコを飼っている人は、近所にどれほど血統書付きの動物が飼われていたとしても、それをうらやましがることはまずないでしょう。自分のイヌやネコが世界でいちばんかわいいと思っているはずです。

写真=iStock.com/FamVeld
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自分が好きと思えるものに囲まれていれば幸福になる

あるいは古い国産の自家用車の横をフェラーリが追い越していったとき、速いとかカッコいいと思うことはあったとしても、嫉妬までには至らないでしょう。もともとフェラーリに乗りたいと思っているなら別ですが、自家用車には馴染みも愛着もあるからです。

ラッセルは〈賢い人の場合は、ほかの人がほかのものを持っているからといって、自分の持っているものが楽しいものでなくなるようなことはない〉と指摘しています。まさにそのとおりで、むしろ他人からどう見られようと自分が好きと思えるものに囲まれて暮らしたほうが、よほど幸福な気持ちになれるでしょう。

ちなみに私は、「2ノ1」と書かれた30センチのものさしを今でも持っています。これは小学校の2年1組のこと。つまりもう50年も前の代物ですが、なぜか捨てられない。昨今の「断捨離」を推奨する風潮には逆行しますが、そういうものを、誰でも少なからず持っているのではないでしょうか。