かつては「丁稚の若手」「内職さん」に支えられていた
機械やテクノロジーでは代替できない職人技だからこそ、世代交代が重要になってくる。
現在、五月人形をつくる職人の平均年齢は50~60代。平均年齢が60~70代のひな人形と比べると、後継ぎの育成は進んでいる方だという。
それでも、世代交代へのハードルは高い。その背景には労働環境の変化がある。いわゆる丁稚制度があった時代は、たとえ若手が人形づくりに失敗しても材料費だけで済んだ。それが、現在の最低賃金が保証されている時代では、どうしても人的コストの増加につながってしまう。
加えて、職人を支える「内職さん」が激減していることも「職人の高齢化が急速に進んでいる要因になっている」と横山社長は説明する。
「人形づくりに必要な細かな作業を行う内職さんが絶滅危惧状態になっていて、内職さんに依頼していた作業の内製化を余儀なくされている現状があります。伝統産業は、内職さんの存在があってこそ成り立っているようなものなので、この状況は極めて重要な課題と認識しています。資材の高騰化はもとより、内製化が進めば進むほど価格が上がってしまうので、中長期的に考えても解決していかなければならない問題だと捉えています。
このように、さまざまな逆風が吹いていますが、我々は日本の伝統を担っている自負を持っています。『人形は心の和を創造する』という信念を貫き、これからも時代の変遷に合わせた商品を提供できるよう、創意工夫をしながら尽力していきたいと考えています」