過去にとらわれず、投資を惜しまない気概が必要

これまで、ダイソンは独創的で斬新な製品をたくさん販売してきた。「ブレイクスルーを起こすには『冒険心』が大事になってくる」とカーさんは続ける。

「まだ見ぬイノベーティブな製品がヒットするかどうかはある種、賭けのようなものであり、当然大きなリスクも背負うことになります。それでも、エンジニアや科学者などの英知を集結させることで、現場から素晴らしいブレイクスルーが生まれると思っています。過去の経験則にとらわれたり失敗を恐れたりせず、投資を惜しまない気概が非常に大切だと言えるでしょう」

写真=筆者撮影
Dyson V12 Detect Slimには、レーザー技術で微細なホコリを可視化し、目に見えないゴミも吸引する最新技術が搭載されている

掃除機開発では5127回の試作を繰り返した

創業者のダイソン氏はサイクロン式の掃除機を開発するために、5127回もの試作を繰り返した。

試しては失敗し、時に打ちひしがれる思いを経験しながらも、やり方を変えて何度もアプローチしていく。

すぐに形にならずとも、諦めずに失敗から学んだことを糧に、研究開発をしていくダイソン氏のスピリットが、今もなお開発に携わる社員たちに脈々と受け継がれているのだ。

サイクロン式掃除機で日の目を見たダイソンのテクノロジーは、その後も空調家電やヘアケア、照明などの製品にも応用され、消費者の裾野を広げてきた。

画像提供=ダイソン
コロナ禍で需要が高まっている空気清浄機。左から「Dyson Purifier Humidify+Cool Formaldehyde 加湿空気清浄機」と「Dyson Purifier Humidify+Cool 加湿空気清浄機」

まさにエンジニアリングカンパニーたる姿勢は、今後も変わることはないだろう。

最後にカーさんへ今後の展望について伺った。

「ハイスペックで効率性が求められる今、時代のニーズに合った製品を開発していくのはもちろん、継続的なテクノロジーの探求や実装を行っていくことが大事だと思っています。テクノロジーの発展のスピードは目覚ましく、最先端のAI技術やセンシング技術をうまく組み合わせ、自動で操作ができるような機能も搭載できるようにしていければと思っています。コロナ禍で消費者志向が変わり、ライフスタイルが多様化していますが、お客様の求めるユーザー体験を意識しながら、今後も研究開発に尽力していく予定です」

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