ビッグマック指数で、ついに中国にも抜かれた

『日本が先進国から脱落する日』で、私は、「円安が進んでいるので、ビッグマック指数で見ても、日本は中国に抜かれただろう」と書いた(「日本のビッグマックはタイより安い…日本が急激に貧しくなったのは『アベノミクス』の責任である」)

今年2月に『エコノミスト』誌から発表された数字では、実際に、中国に抜かれてしまった。ポーランドにも抜かれた。いまや日本より下位にあるのは、ペルー、パキスタン、レバノン、ベトナムなどといった国だ。

円の購買力を見るために、「実質実効為替レート」という指標が用いられる。国際決済銀行(BIS)が2月17日に発表した今年1月時点の円の実質実効為替レート(2010年=100)は、67.55となり、1972年6月(67.49)以来の円安水準となった。

このときの市場レートは、1ドル=115円程度であった。ところが、上記のように、その後、さらに円安が進んだ。

仮に実質レートが名目為替レートに比例的に低下するとすれば、1ドル=122円での実質レートは、63.7程度となっているはずだ。これは、固定相場制だった1971年11月の63.35と同程度の水準だ。

この頃、私はアメリカに留学していた。日本での給与が月2万3000円だったのに対して、アメリカの大学の周辺にあるアパートは、最も安いところで、賃料が月100ドル、つまり3万6000円だった。日本円の購買力が低いといかに惨めな状態になるか。それを身をもって体験させられた。

いまの日本円の購買力は、『日本が先進国から脱落する日』を書いていた2021年末よりも、さらに悪化している。私が日本の給与の安さを嘆いていた、まさにその当時まで低下してしまったのだ。

日銀は、投機取引を正当化している

現在のように日米間で顕著な金利の差があると、「円キャリー」と呼ばれる取引が発生する。これは低金利である円で資金を調達し、それを高金利であるドルに転換して運用する取引だ。それによって金利差だけの収入を得ることを目的とする。

ただし、これは投機的な取引である。なぜなら、金利差を是正すべく、日本が金利を引き上げる可能性があるからだ。すると、円高が進行し、ドルから円に戻すときに、損失が発生する。

ところが、日銀は、円キャリー取引の利益を保証している。とくに、3月28日に国債市場に介入して金利を抑えたことは、金利差が縮小することはないと保証したことになる。

したがって、投機家は安心して円キャリー取引を行える。これによって円が売られドルが買われるので、さらに円安が進むことになる。すると、ドルを円に戻すときに、さらに為替差益を稼ぐことができる。

つまり、日銀が円安是認・金利抑制を明確に示しているために、円キャリーという投機的取引を助長していることになる。そして、それがさらに円安を加速しているのだ。これは、中央銀行の行動として、信じられないようなものだ。