国の豊かさを示す指標である「一人あたりGDP」が日本だけ落ち続けている。野口悠紀雄・一橋大学名誉教授は「このままの経済成長率では、韓国や台湾に抜かれるどころか、マレーシアやインドネシア並みの数値になる」という――。

※本稿は、野口悠紀雄『日本が先進国から脱落する日』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

自民党総裁選挙の共同記者会見で質問に答える安倍晋三首相
写真=時事通信フォト
自民党総裁選挙の共同記者会見で質問に答える安倍晋三首相(当時)=2018年9月10日、東京・永田町の自民党本部

日本の一人あたりGDPはアメリカの約60%にまで落ちた

その国全体の経済活動規模を表す経済指標にGDP(国内総生産)がある。

GDPの値は人口が多くなれば大きくなる。したがって、GDPが大きいからといって、必ずしもその国が豊かであるわけではない。そこで、GDPを人口で割った値が、豊かさを表す指標として用いられる。これが、「一人あたりGDP」だ。

一人あたりGDPは賃金とほぼ同じ動向を示す指標であり、国際比較データを入手しやすい。これについての時間的な推移を見ると、図表1に示すとおりだ。

【図表1】日米韓の1人あたりGDPの推移
出典=野口悠紀雄『日本が先進国から脱落する日』(プレジデント社)

2020年における一人あたりGDPは、日本は4万146ドルであり、アメリカの6万3415ドルの63.3%だ。

昔からそうだったわけではない。2000年においては、市場為替レートで換算した一人あたり名目GDPは、アメリカが3万6317ドル、日本が3万9172ドルであり、日本が8%ほど高かった。

ところが、その後の成長に大きな差があった。

2000年から2020年の間に、自国通貨建て一人あたり名目GDPは、日本では422万円から428万円へと1.4%しか増えなかったのに対して、アメリカでは3万6317ドルから6万3415ドルへと74.6%も増えたのである。

このために、2020年には、日本はアメリカの63.3%にまで落ち込んだのだ。