先の是枝監督たちが宣言の中でこういっている。
「加害行為は、最近になって突然増えたわけではありません。残念ながらはるか以前から繰り返されてきました」
こうした悪習は、日本の映画界に残っている“宿痾”のようなものである。「映画村」という言葉に象徴されるように、いまだに村社会なのだ。
アメリカに比べて日本は、性被害に遭ってもいい出しにくい“空気”がある。伊藤詩織さんのケースでも、被害を受けた女性のほうにも非があったのではないかなどといい出す輩もいた。
日本の芸能界にも「枕営業」という言葉がある。女優が事務所などからいわれて、大物プロデューサーやディレクターのところへ枕営業に行かされたという告白が時々出ることがあるが、大きな問題に発展したことはない。
ハリウッドはなぜ声を上げられたのだろうか。ロスアンジェルスの映画村には、世界中から女優になりたい女性たちが集まる。その女性たちを自分の欲望の餌食にしようと企むプロデューサー、監督、俳優も多くいるだろうが、中には、彼らたちの性加害を堂々と実名で告発する女性が、ワインスタインのケースのように出てくる。
それは、ハリウッドに集う女性たちの多様性と自立心だと思う。日本ではどうか。
私の心配は杞憂に終わりそうである。週刊女性(4月19日号)が、園子温監督が「映画に出たかったらオレと寝ろ」と女優たちに迫っていたと報じたのだ。
「“主演女優にはだいたい手を出した”とも」
園監督といえば、映画『愛のむきだし』でベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞している。その後も、『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』などを発表し、ハリウッド進出も果たしている有名監督である。
女優のAさんはこう証言している。
「普段から“女はみんな、仕事が欲しいから俺に寄ってくる”と話していました。“主演女優にはだいたい手を出した”とも。ある女優さんのことを“俺のおかげで売れたんだ”と言ってましたが“別の男に乗り換えられて、捨てられた”って嘆いていました」
別の女優は、こんな話をしている。
「マネージャーと一緒にアトリエに呼ばれて3人でビールを飲んでいたら、いきなり園さんが脱ぎ始めて“ふたりでして”と要求してきたそうです。結局、園さんは飲みすぎたせいか、途中でやめてしまったみたいですけど」
元女優で音楽活動もしていたCさんは、俳優のTとランチをした後、園の自宅に連れて行かれたという。
Tは消えて、園は寝室へ誘ったそうだ。
「私は、絶対に寝室に入りたくなかったので、ドアの外からハット(編集部注=園監督のハットのコレクション)を見ていました。でも、強引に腕を引っ張られ、ベッドに押し倒されて馬乗りされました。そして、キスをされたり、首元を舐められたり、胸を揉まれたり……。私の身体に股間を押しつけてきて触らせようとしてきたり、服の首元から、中に手を入れられたりもしました」