夜型人間は損をしている?

朝型と夜型、それぞれの典型的な性格や生活サイクルを見てもらえば想像できますが、夜型の人はちょっとかわいそう……というか、損をしていることが多いのが実情です。

世のなかの学校や会社の大半が朝からはじまります。朝型の人はしっかり力を発揮できますが、夜型の人はまだ眠そうに目をこすっている時間帯です。

たとえ本来の能力が同等でも、朝型の人のほうが学校での授業もきちんと受けることができますから、先生から評価されて内申点も高くなるかもしれません。

さらに、授業の理解も高まるだけでなく、試験が行われるのも日中ですから、いうまでもなく学業成績が上がります。もちろん、社会人でも周囲から評価されやすいのは朝型です。

わたしも典型的な夜型ですので、学生の頃など、午前中の授業に間に合わずに単位を落としかけたことは数え切れません。あまりに起きられないので、友人が電話で何度も起こしてくれたことをいまでも思い出します。

また、持っている能力を発揮することに影響があるという意味では、勉強や仕事に限った話ではありません。クロノタイプはもちろん、身体能力にも大きな影響を与えます。

アスリートのクロノタイプと運動パフォーマンスを調べた2015年のイギリスの研究では、朝型は午後1~4時、中間型は午後4~7時、夜型は午後7~10時にパフォーマンスのピークを迎えることがわかりました。

さらに、個人のパフォーマンスは1日のなかで最大26.2%も変わるというではありませんか。

プロ野球のナイターなどは別としても、スポーツが行われるのはたいてい日中です。すると、大事な一戦を迎えた夜型のアスリートは、昼間に試合が行われるがために、本来の能力の4分の3程度しかその力を発揮できないということも起こり得るわけです。

0.01秒を争うような短距離走のランナーで26.2%もパフォーマンスが変われば、それこそ成績を大きく左右することになりかねません。

夜型は朝型より呼吸器疾患の発症リスクが1.22倍

アスリートではない一般の人の話に戻しましょう。

夜型の人は平日に眠くなるのが遅く、結果として寝つく時間も深夜になります。翌朝は仕事のために起床時刻が決まっていることから、常に睡眠不足気味になり、週末には「寝だめ」をしがちという傾向があります。

せっかくの週末の時間を有効に使えなくなるばかりか、就寝時間や起床時間が後退し、さらに夜型化が進むという悪循環に陥っていくのです。

このような特性を持つため、夜型の人は、新しい週を迎えた月曜日の朝にまるで時差ボケのような状態になり、パフォーマンスが上がりにくいということになりがちです。これを、「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)」といいます。

ちなみに、寝だめでは心身の完全回復が望めません。寝だめすることによって体感としての疲れは軽くなるのですが、パフォーマンス自体は正常な状態には戻らないのです。

もっといえば、病気のなりやすさという点でも夜型の人には嬉しくないデータがいくつも揃っています。

例えば、朝型の人と比べて、夜型の人の呼吸器疾患の発症リスクは1.22倍、消化器・胸部疾患は1.23倍、神経疾患は1.25倍、糖尿病は1.3倍、うつ病など精神疾患の発症リスクに至っては1.94倍というデータが存在します。

これは、日常的に睡眠不足だったり、週末に寝だめをするなど生活習慣が不規則だったりということからくるものではなく、遺伝的なものだといわれています。

ここまで、夜型のデメリットばかりを書き連ねてきましたが、もちろん、夜型にもメリットはあります。

夜型の最大のメリットは、時差ボケのような急な生活リズムの変更に適応しやすいということ。逆に、朝型の人の場合は、体内時計の調整能力が夜型よりも劣ります。急な出張や交代勤務に適応するのは、夜型よりもずっと大変なのです。