世界全体で「ヒト、モノ、カネ」の動きが止まる

特に、世界経済全体で車載用の半導体の不足は深刻だ。本邦企業の自動車や精密機械の生産も止まりはじめた。感染再拡大とゼロコロナ対策によって中国での生産活動はより強く制限され、ロジック半導体やIT機器、自動車、アパレル、日用雑貨などの供給制約がこれまで以上に深刻化する可能性が高い。世界的な中古車価格の上昇は勢いづくだろう。

それに加えて、世界の物流の混乱にも拍車がかかる。3月に入り上海市では行動規制が日増しに強化されている。世界最大のコンテナ取扱個数を誇る上海をはじめ中国の港湾施設の稼働率低下は避けられない状況だ。それによって、世界的にタンカー、コンテナ、船員の不足が深刻化するだろう。

海運の混乱は世界各国の陸空運の遅延やコスト増加につながり、“ジャストインタイム”の資材調達や納入がこれまでに増して難しくなる。ウクライナ危機によって世界経済の供給のボトルネックが深刻化する中で中国がゼロコロナ対策を強化することによって、世界全体でヒト、モノ、カネの動きは停滞せざるを得ない。

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「エネルギー不足」と「モノ不足」のWパンチ

米欧などの制裁によってロシアはグローバル経済から孤立し、世界経済はブロック化に向かいはじめた。世界全体でエネルギー資源などの供給が需要を下回る構造が鮮明となるだろう。深圳市などのロックダウンはそうした変化を加速させる要因だ。各国の企業は、サプライチェーンの再構築をこれまで以上に急がなければならない。在庫の積み増しやサプライヤーへの資金や人的支援を強化する企業は増える。

調達難や人手不足によってやむを得ず生産拠点を自国内に戻す先進国の企業も増えるだろう。いずれも、企業のコスト増加要因だ。グローバルにサプライチェーンは混乱し、世界全体で経済運営の効率性が低下する。企業はコストの増加に直面して業績悪化懸念が高まる。その結果として、世界全体で経済の成長率は低下するだろう。