日本への逆風が一段と強まっている

それに加えて、ウクライナ危機によってエネルギーや希少金属、半導体製造に必要なネオンガスなどの供給が減少し、構造的に物価は上昇しやすくなる。中国のゼロコロナ対策による供給の制約が上乗せされることによって、コストプッシュ型のインフレ圧力は一段と高まりやすい。原油価格の下落にもかかわらず米国の金融市場で投資家のインフレ予想が上昇しているのは、世界全体で加速度的かつ構造的に物価上昇圧力が高まるとの危機感が増えているからだ。

このように考えると、深圳市などのロックダウンは、景気減速あるいは後退と、物価上昇の同時進行に陥る国が増える可能性を一段と高めている。そうした状況が現実のものとなれば、中央銀行は金融システムの安定を維持するために金融政策の正常化を急ぎ、さらには引き締めに集中しなければならない。言い換えれば、景気下支えのために金融政策にできることがより限られる。

それは、資源がなく内需が縮小均衡に向かうわが国経済にとってかなり厳しい。資源価格の上昇圧力に加えて、内外の金利差の拡大によって円安が進み、わが国の交易条件がさらに悪化するリスクは高まっている。中国をはじめ海外の自動車需要などを取り込んで景気の緩やかな持ち直しを実現してきたわが国への逆風は一段と強まっている。

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