「アジアのシリコンバレー封鎖」がもたらす悪影響

3月中旬に入り、世界経済にとって無視できないリスク要因が、また一つ増えた。それが、中国における新型コロナウイルスの急速な感染再拡大だ。特に、“アジアのシリコンバレー”などと呼ばれIT先端企業が多く集積する広東省深圳市のロックダウン=都市封鎖は世界経済に大きなマイナスの影響を与える。

北京で開催された中国人民政治協商会議(CPPCC)の開会式に出席した習近平国家主席=2022年3月4日
写真=AFP/時事通信フォト
北京で開催された中国人民政治協商会議(CPPCC)の開会式に出席した習近平国家主席=2022年3月4日

深圳市の動線は寸断され、ITデバイスなどのモノを作ろうにも作れない企業が増えている。ウクライナ危機を背景とする世界的な景気減速と物価上昇の同時進行懸念は追加的に高まりやすい。

中国の感染状況を見る限り、いつ、何によって、世界全体で感染が終息に向かうかは見通しづらい。秋には、5年に一度の党大会という共産党政権にとっての最重要イベントが控える。3期続投を目指す習近平主席によって行動制限は強化され、都市封鎖に追い込まれる中国の都市は増える可能性が高い。

それによって、経済活動の維持に不可欠な動線が絞られ、遮断される状況は長引く。その結果、世界的な半導体の不足など、これまでに顕在化した問題が深刻化し、自動車などのモノの生産が追加的に減少する展開は排除できない。

iPhoneの工場「フォックスコン」も操業を停止

3月中旬、深圳市のロックダウンによって世界のIT先端企業の株式が売られる場面があった。深圳市は、改革開放以降の中国経済の高成長を象徴する都市だ。2020年の時点で深圳市の電子情報産業の生産額は中国全体の5分の1に達したとみられる。

ロックダウンは、中国内外のIT先端企業の事業運営、さらには世界経済全体でのデジタル化の足枷だ。そうした懸念が高まり、3月14日のアジア時間の株式市場では、香港のハンセン指数や、台湾の加権指数を構成する主要なIT関連企業の株価が下落した。海外時間には米ナスダック市場も下落した。

深圳市はスマートフォンなどIT先端機器の供給地として世界経済に組み込まれ、年々その役割が増した。例えば、米国のアップルは世界最大の電子機器の受託製造企業である台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)傘下の中国企業であるフォックスコンにiPhoneなどの組み立て生産を委託している。深圳市がロックダウンされた結果、フォックスコンが運営する工場は操業を停止した。それによって、iPhoneなどの生産は一時的に止まる。