「ゼロコロナ政策」に頼る習政権の行き詰まり

また、深圳市には“BAT”と呼ばれるバイドゥ、アリババ、テンセントなど世界的な競争力を持つ中国のIT先端企業もオフィスを構える。ロックダウンは、共産党政権の強い締めつけに直面するアリババなどの業績悪化懸念を追加的に高める。

軽視できないのが、共産党政権による厳格なゼロコロナの徹底やワクチン接種などの対策にもかかわらず、感染が止まらないことだ。急速な感染再拡大によって、人々の恐怖心理は高まる。それに加えて動線の寸断が飲食や宿泊などのサービス業の収益を追加的に圧迫し、雇用と所得環境の悪化懸念も高まるだろう。その結果として、共産党政権への不満も増える。

そうした展開を防ぐために習政権は、より強く動線を絞り、感染の抑制に取り組まざるを得ない状況に陥っているように見える。中国経済の成長率の低下傾向はより鮮明となるだろう。

高まる「ロジック半導体不足」の懸念

それに加えて、世界経済全体で供給の制約(ボトルネック)が深刻化するだろう。その一つとして懸念が高まりやすいのが、演算処理などを行うロジック半導体の不足に拍車がかかる展開だ。

例えば、南京市には世界最大の半導体受託製造企業(ファウンドリ)である台湾積体電路製造(TSMC)が工場を置く。昨年、TSMCは南京工場に車載用半導体の生産ラインを増設すると発表した。2022年下半期に生産能力の拡充が行われる模様だ。3月に入り南京市では感染者が再増加に転じている。もし、感染者が増加し続ければ同市当局は強い行動制限を実施しなければならないだろう。状況次第ではTSMC南京工場の操業が停滞したり、サプライチェーンが寸断したりするリスクは過小評価できない。

昨年12月に西安市がロックダウンされた時、韓国サムスン電子や米マイクロン・テクノロジーが供給するメモリ半導体の不足懸念が高まった。そうした企業と異なり、TSMCは最先端から汎用型のロジック半導体の供給で世界経済に圧倒的な影響力を持つ。