景気減速に歯止めがかからない

中国経済の減速が鮮明だ。1月の財新/IHSマークイット製造業購買担当者景況感指数(PMI)は50を下回った。国家統計局が発表するPMIは、国有、国営企業などの大企業を中心にアンケート調査を行い、景況感を調査する。それに対して、財新PMIには相対的に事業規模の小さい企業が多く含まれる。雇用や市民生活に大きく影響する中小企業の事業運営の厳しさは増していると考えられる。

中国の習近平国家主席
写真=中国通信/時事通信フォト
中国の習近平国家主席

今後、共産党政権は財政支出の拡大によるインフラ投資の前倒しや、追加の金融緩和策の実施によって何とか景気の減速を食い止めようとするだろう。しかし、その効果は期待しづらい。不動産市況はさらに悪化するだろう。ゼロコロナ対策も景気にマイナスだ。それに加えて、米国の金融政策の転換も中国経済に逆風となるだろう。景気減速によって社会心理は不安定化し、習近平政権にもマイナスの影響が及ぶ展開は否定できない。

不動産バブル崩壊、ゼロコロナ対策、物価上昇…

中国経済の減速が止まらない。1月の財新製造業PMIは景気の回復と減速の境目である50を下回り、49.1に低下した。国家統計局が発表したPMIは50を上回ったが、前月から低下した。その要因は多い。国内要因として、不動産バブル崩壊や感染再拡大とゼロコロナ対策による動線の寸断のインパクトが大きい。感染再拡大による世界のサプライチェーン寸断も財新製造業PMIが50を下回った要因だ。

それに加えて、エネルギー資源や穀物などの価格上昇によって、世界的に卸売物価が上昇している。モノを作ろうにも、資材が不足している。動線寸断によって労働者も集まらない。共産党政権による価格統制によって企業が最終価格にコストを転嫁することも難しいだろう。1月の財新製造業PMIは、複合的な要因によって事業運営体制が不安定化する中国中小企業の苦境を示唆する。