プーチン大統領の誕生…FSB出身者が主要ポストを独占

こうしてFSBはロシアの中枢を乗っ取ることに成功し、1999年12月31日にはエリツィンが大統領を辞任することを表明し、プーチンが大統領代行兼首相となった。さらに2000年3月26日、一回目の投票で51.95%の票を獲得し、プーチンが正式にロシア大統領となった。

グレンコ・アンドリー『プーチン幻想』(PHP新書)

当選後、プーチンは真っ先に言論統制を開始した。最も有名だったのは、プーチンに対抗するオリガルヒのグシンスキーが所有する大手テレビ局NTV(ロシア語表記:НTB)の強奪だった。NTVは全国的に人気のテレビ局だったが、その理由は首相時代からプーチンを批判していたからである。

大統領当選後、一年も経たないうちに、プーチン政権はNTVをグシンスキーから強奪し、所有権をガスプロム(天然資源を扱うロシア最大の国家独占企業)に委譲した。NTVを強奪する際、治安部隊はテレビ局の本部を占拠し、新しい所有者を認める職員以外は建物の中に入れなかった。

また、それまでロシア連邦各州の州知事は選挙によって選ばれたが、プーチンは制度を変えてしまい、州知事を大統領が直接、任命できるようにした。知事が任命される国のどこが「連邦」なのか、ということなのだが。さらに、国家の主要ポストに次第にFSB出身者が任命されるようになり、FSBによるロシアの支配が確立した。

ロシアは「謀略機関の所有する国家」

このように、プーチンは自国民を大量に殺すことによって権力を握った。

今のロシアは、大量虐殺や対外謀略を実行した残酷な組織であるNKVD―KGB―FSBに延々と支配され続けている。つまりロシアは「国家の謀略機関」を所有しているのではなく、「謀略機関の所有する国家」なのだ。

言い換えれば、全体主義体制を維持するために監視や恐怖をもたらす「道具」が主体性を持ち、国家そのものを自分の道具にしたのである。

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