「雇用が失われる!」という批判は的外れ

つまり、「中小企業の再編が必要だ」というアトキンソン氏の発言に脊髄反射的に「日本の中小企業の貴重な技術が外資に買われるぞ!」と言って反対するような人たちは、こういう「中小企業のリアリティ」を体感したことがなく、ある種の「イデオロギー的思い込み」だけで反対しているところがあります。

また「再編なんてしたら、雇用が失われるんじゃないか?」という反発もあります。しかしそもそも少子高齢化で労働人口が激減する中、あまり移民も入れたくない国民性であるという状況の日本においては、心配する方向が間違っている。

そもそも、各種データを見ればどの統計でも日本の“企業数”は毎年かなり減り続けている一方、就業者数はむしろ伸びており、完全失業率に至っては世界がうらやむ3%以下に張り付いている。そのことを考えると、「中小企業を統合すると雇用が」といった恐怖心は、杞憂にすぎないと言えます。

重要なのは「高給を出せる働き口」をいかに作れるか

要するに、今の日本は「高給を出せる働き口」をいかに作れるかが大事で、「最低賃金をちょっと上げたらすぐ潰れちゃいます」みたいな会社がいくらあってもダメだ、ということです。

倉本圭造『日本人のための議論と対話の教科書』(ワニブックスPLUS新書)

アトキンソン氏が「アメリカの巨大IT企業のように日本の全ての会社が運営できなければダメだ、というのは極論すぎる」と指摘しているように、社会の八割以上を占める「普通の会社」において「マトモな給料を出せるようにする」ために重要なのは、世界を制覇する革新的なベンチャー企業を作るような超人的な能力ではありません。

そうではなく、「普通に必要な変化を取り込み続ける優秀さ」が社会の隅々まで普及している必要がある。そしてそういう「普通の優秀さ」が社会に満ちていれば、彼らを政府が政策的に過剰に守る必要もなくなって、「アメリカ型創造的破壊ベンチャー」を社会が許容できる余力も増してくる好循環も生まれるでしょう。

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