「半分休むかわりに残りは2倍働く」

——ちなみにここ最近に制作された道頓堀の看板はありますか?

射的の店やな。ビリケンさんとか龍とか、いろいろごちゃごちゃっとつけて欲しいゆう注文でね。

——2020年の新型コロナ以降、お仕事の現場には変化がありましたか?

去年(2020年)はガタッと減りましたよ。ただ、コロナの影響で仕事は減ったけど、そのころ、作り手がやめてもうて人がおらんかったから、ちょうどよかったと思う。そのころに入った新人さん3人に集中的に作業を教えることもできたしね。

——2021年になって仕事量は戻ってきましたか?

うん。増えてきてるかな。なんかしら忙しいですね。さっきもゆうたけど、僕はもっと楽したいんですよ(笑)。月の半分しか仕事しないけど、そのかわり月の半分、仕事してるときはみんなの倍はやってるゆうふうにしたいんです。ちょっとでも早くできるようにとか、いかに手を抜くかとか、そういうことばっかり考えてますよ(笑)。あいつは3日かかるけど、俺やったら1日でできるとか、いつもそう思ってますもん。

——人手が足りないときに依頼がたくさん来たら、一気にすごく大変になりそうですね。制作物の大きさもさまざまだと思うのですが、依頼内容に応じて制作期間もかなり違ってきますか?

だいたいこれぐらいやな、っていうのはすぐわかりますね。でもこういうのはキリがない。時間かければかけるほどええのできるし、せやけどうちらは看板屋やから、そこまで手をかける必要がない。「どうせ高いところにつけるんやから、わからんやろ」ぐらいの(笑)。だから僕がここに来てスタッフにいつも言うのは「手え抜けー! 手え抜けー!」って。よその社長は「ええの作れー! ええの作れー!」ゆうけど、僕は逆です(笑)。

看板は建物と一体になってからが面白い

——こういった看板は、設置するのは別の業者さんが担当されるんですか?

スズキナオ『「それから」の大阪』(集英社新書)

うん。基本的にうちは作るだけで、だいたい大きな看板屋さんを通して依頼が来るから、取り付けるのはその看板屋さんの方やね。僕が一人でやってた時分は、設置までみんな請け負ってたけどね。大阪だけじゃなく地方からの依頼も多くなったからね。地方やったら地方の看板屋さんが取り付けはるゆうことやね。

——ポップ工芸さんはあくまで立体看板そのものを作るところまでで、依頼元の看板屋さんがここに引き取りに来て取り付けるわけですね。

そうです。ここで引き渡し。取りに来られない場合は運送屋さんに頼んでね。やから、それがどこにどんなふうに付いてるかは知らないんですよ(笑)。ここで作った単品の状態はもちろん見てるんやけど、単品だけじゃあんまり面白おもしろないよね。建物と一体になったときが面白いんやけどね。

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