「とにかく他より目立て」で看板が飛び出てくる

——中村さんの制作物が評判になって、立体看板の注文が増えてきたのでしょうか。

評判になったんかは知らんけど、まあ結局、大阪の道頓堀のお店ゆうたらね、目立たしたいゆうんか、「カニもある、龍もある、じゃあうちも」ゆう感じで、うちも作りたいなっちゅう感じになったんちゃいますか。「あそこより目立つやつ作ったろ」ゆう感じでね。

——大阪以外に向けても制作をされているということでしたが、やはり、数としては大阪が多いですか?

国内は北海道から九州までいろいろやってますね。海外やとドバイとか、シンガポールとか、タイ、中国とかね。自分とこで作った方が早いんちゃうかと思うけどね(笑)。でもまあ、大阪は多いですね。特に派手な看板は道頓堀に集中的にあるからね。道頓堀のお店から依頼が来ると、こっちもちょっと力が入るゆうんかね、普通の看板はだいたいみな仲介の業者さん任せで「はい、わかりました。そのとおり作ります」ゆうて依頼どおりに作るんですけど、道頓堀に関しては、一応こっちからちょっかい出してる(笑)。「そんなんより、もうちょっとこんなんやりましょうよ」みたいなのはあります。

道頓堀の看板は「ダサいほどいい」

——ポップ工芸さん側から提案することもあるわけですね。

「せっかく道頓堀に看板つけるんやったら、ちょっとでも目立つようにしましょう」ゆうことでね。だから、元禄さん(「元禄寿司道頓堀店」)なんかも、もともとはお皿に2貫ずつ乗ったやつを6種類ぐらい並べるゆう感じで依頼がきたんですけど、「それやったら1個ボーンと大きいの作った方が迫力あるんと違いますか」ゆうことで作ったんですね。そして、それだけやったら面白くないからゆうて、手を後で付け加えたんです。

出所=『「それから」の大阪』
写真=スズキナオ

——あの看板は本当にインパクトがありますね。ああいう面白いものがあるおかげで、「道頓堀といえば立体看板」というイメージができあがっているような気がします。

看板出す店の人らが「目立たんからもうちょっと前に出したい」ゆうてお互いだんだん前に出て行くんですわ(笑)。

——もうあれは観光資源だと思います。あれがあるから「道頓堀に来たぞ!」と感じるというか。道頓堀だからこそのものだと思います。

まあ、大阪の人は笑わせるとか喜ばせるのが好きなんやろうね。目立ちたがりやからね。普通の場所やったら、「なんや、あのダッサいの」とか言われるかもわからん。それがないからね、大阪の場合は。「ダサければダサいほどええ」みたいな(笑)。