タマゴの食べ過ぎによる便秘は雑草で解決

鳥の大群の産卵がすむとアオウミガメが陸にあがってきて産卵するようになった。ウミガメは陸にあがってくるとしかるべきところに後ろ足で丁寧に穴を掘って、大きなアオウミガメは1頭で90個から170個ほどもまんまるいタマゴを産む。タイマイは130個から250個ぐらい産む。産みおわると丁寧に砂をかけてまた海に戻っていく。

それらを捕まえて食べるのは容易だが、ウミガメの上陸も日ごと数をましてくるのでもてあましてくる。そこでやがてくる冬に備えてウミガメを飼育するようにしたらどうか、という意見が出てきた。

アオウミガメの卵はまん丸でいくらゆでても白身がかたまらないことを知った。しかしとてもおいしい。タイマイのタマゴもうまいが親の肉は臭みがあってまずかった。アカウミガメの肉も、においがあって、食用にならない。いずれにしろその2種類ともタマゴはうまいのでそればかり食べていたからなのか全員完全な便秘になってしまった。

野菜をちっとも食べないからだ、と考えて島にはえている草をよく調べたら4種類あることがわかった。そのうちワサビに似た草があるのを発見し、それをさしみにそえて食べるとなかなかうまい。同時に海水をおわんに半分ぐらい飲むようにしたら全員の便秘がなおった。

たくさんのウミガメを結んで飼う

ウミガメを飼うにはどうしたらいいか。以前掘ってつかいものにならなかった井戸のなかにいれておいたら、まもなくみんな死んでしまった。

そこで海岸の波打ち際に杭をたくさん打ってその杭とカメの後ろのヒレにしっかりと索を結んでおいたらカメは空腹になると勝手に海に入って魚を食べ、あとはおとなしく砂浜に戻ってきて甲羅干しをしている。そういう牧場を2カ所につくり沢山のカメを飼うことになった。もちろん全体の面倒を見るためのカメ係も交代の役割になった。

椎名誠『漂流者は何を食べていたか』(新潮選書)

船長は前に海図を見て、西の方に別の島があることを覚えていた。島といっても高さは殆どなく、自分たちのいる平均標高2メートルぐらいの平らで心細い規模だ。

アザラシ半島にいくといつでも沢山のアザラシに会えた。船長の最初の命令と約束を守り、誰もアザラシに危害をくわえようとはしないので、人間をはじめてみたアザラシたちはたちまち人間と仲良くなった。とくに親しくするためには釣った魚を手土産に持っていくと友達になるのも早かったが、人間から見ると個体の見わけがつかないだろう。しかし親しくなったアザラシはその人をむこうから見つけてくれるようになった。そしてそばにくると甘えて寄りそってくるようになったというから可愛い。

乗組員のひとりととりわけ親しくなった大型アザラシの友情など読んでいると思わずのめりこんでしまう。

船長が岩の上に立って棒切れを海に放り投げる、アザラシはいっせいにその棒切れを追っていき、一番早く噛みついたのがほうりなげた人間のところに持ってきて、さらに投げてくれ、とみんなで待っている、というエピソードもある。

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