消費者の「欲しいタイミング」を完全に逃した

ところが、欧州市場で日本製環境車のシェアを脅かす2つの大きな動きが生まれた。

ひとつは、テスラの普及で消費者が「EVに大きく移行するムーブメント」が起きたタイミングで日本製EVの新型モデルが市場に存在しなかったことだ。せっかく、トヨタがHEVで欧州市場に確固たる地位を築いたにもかかわらず、EV需要に応えられるだけのモデルを用意できていなかった。そこへ、圧倒的な安さで売り込む韓国製EVが登場、日本製に流れそうな需要を一気にかっさらってしまう事態が起きた。

もう一つは、簡易的な機構を持ったマイルド・ハイブリッド車(mHEV)が、欧州で一気に普及したことだ。ブレーキ時の回生エネルギーをバッテリーに蓄え、その電力を必要に応じてモーターを回し、エンジンをアシストするという仕組みを持つ。これにより、信号待ち時のアイドリングを防げる、加速性能が増すといったメリットが生まれる。しかもLIBにかかる電圧を許容接触電圧である50Vより低い48Vにとどめた。

感電防止にかかる機構を簡略化したことで車体価格が下がった。この分野で、欧州の既存メーカーがさまざまなモデルを出したことで、相対的にプリウスなどの日本製HEVのシェアが削られたというわけだ。韓国のヒョンデやKiaもmHEVを積極的に投入、欧州ユーザーの選択肢を増やしている。

筆者撮影
住宅地の公衆充電スタンドを使用中のKia「e-Niro」(ロンドン西郊外の住宅地にて)

「環境に配慮したZEV」2種を引っ提げ日本に再上陸

日本市場からいったん撤退したヒョンデだが、先ほども触れた通り、ゼロエミッション車(ZEV)の2モデルを引っ提げ、5月の再上陸が決まった。どんなモデルなのか、改めて見てみよう。

2月8日の発表によると、販売されるのはEVの「IONIQ 5」と水素燃料電池車(FCEV)である「NEXO」の2車種。市場参入の背景は、「世界規模で高まる環境配慮への意識や、一人ひとりが個人の価値観を重視した商品選択を行う傾向の高まりを背景に、日本社会の変化に対応する商品を投入する」としている。また、ディーラー網を持たず、購入申し込みはウェブで完結。今年5月よりオーダー受付開始、7月からのデリバリーを予定する。

なお「IONIQ」というモデルは、プロトタイプ登場以来、2~4を名乗ったバージョンはなく、いきなり5を付したモデルが出てきた格好となっている。