2016年の米大統領選での“大誤報”

トランプ大統領が勝利した2016年の大統領選挙もまた、アメリカの大手メディアの歴史に汚点を残しました。11月8日の投開票日の夜。その衝撃はアメリカのみならず、世界中を駆けめぐりました。

開票が始まったころも、民主党のヒラリー・クリントン氏が新しい大統領に選ばれると思い込んでいた人が多かったに違いありません。しかし、結果はトランプ氏の勝利。選挙戦の最中、新聞とテレビの多くがクリントン氏勝利を予測し続けました。

イラク戦争のように、大勢の犠牲者が出たわけではありませんが、結果的には、アメリカのメディアの“誤報”だと私は捉えています。取材力と世論調査の稚拙さ、精度の低さ、思い込み。現場で起きている事実に謙虚に向き合わなかった結果です。

日米で大きく異なる“政治的中立性”の保ち方

共和党のトランプ氏が勝利した2016年11月のアメリカ大統領選挙の前の年、ニューヨーク・タイムズは早々に、民主党のヒラリー・クリントン氏を支持すると表明しました。現地で大統領選を取材していた私は、1面で大きな文字で「クリントン支持」を伝える紙面を手に、「日本とまったく違うな」と感じていました。

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日本では新聞やテレビなど一般的な大手メディアが特定の候補を支持することはありません。日本の場合、政治報道の公平、公正、バランスを考慮すると、そうなります。

しかし、アメリカの読者、視聴者には、日本流のバランスではなく、メディア個々の独自の主張を期待する傾向があると言われます。アメリカ人は、各メディアの異なる主張を踏まえて、議論し、自分の頭で考え、自分の頭で投票する候補を選ぶというのです。メディアは、読者、視聴者、国民に判断を委ね、その判断を尊重し、多様な選択肢を提供するという特徴があります。日本のやり方とは違います。