コロナ禍で創業したメリット

2020年8月、土屋は設立され、ブランド名は「ホームケア土屋」に決めた。資本金100万円、従業員700人、事業所は全国約30カ所でのスタートだった。本社は、高浜さんの自宅がある岡山県井原市に置いた。

コロナ禍の最中に設立した土屋では、総務、人事、法務などの本社業務はほぼ100%リモート勤務。採用面接やミーティングもすべてオンラインだ。

「新型コロナ対策のために思いきって全面リモートにした結果、オフィス費用などを節約できて高利益体質になりました」

介護業界では珍しい給料の高さ

創設時に最も心配したのは介護業界の深刻な人手不足だった。採用活動に力を入れたくても十分な資金がない。そのときに頼りになったのは、金融業界の経験が豊富な吉田政弘さんだった。現在は同社の専務取締役だ。メガバンクを含めた複数の銀行から融資を受けられ、採用投資ができるようになった。1年後には40都道府県で「ホームケア土屋」を展開し、従業員数は400人増えて1100人になった。全国で500人以上の重度障害者や高齢者の生活を支えるまでに成長した。

2020年10月23日、創立記念イベントでの1枚。福山市・鞆の浦にて。(写真提供=土屋)

24時間ケアの訪問介護は楽な仕事ではない。それでも就職希望者は後を絶たないという。

「介護分野でこれだけ給料が高い会社はほかにないと言われます。“介護難民”の問題を解決するには、介護スタッフの待遇改善は不可欠でしょう。地方では雇用創出にもなっているようです」

自身が30代の頃、介護の仕事だけでは食べていけず掛け持ちのハードワークで苦しい思いをした経験は大きいだろう。

従業員数は現在1500人を超え、創業時の2倍以上になった。正社員と登録ヘルパーは半々だ。今期中には事業所が全都道府県に設置できる見込みだ。

土屋には現在のところ競合相手がいない。利用者ニーズが高くても、重度訪問介護の新規参入は難しいのだ。

「利用者の利益を考えると、本当は競合が出てきてほしいんです。しかし現場が大変だから、そこで折れてしまうのでしょう。私たちに事業実績の蓄積があるのは大きいと思います」