個人事業主にも目を光らせている
そして、先ほど述べたように、消費者から受け取った消費税を納付しなくてもよい免税事業者という存在が認められています。
しかも、個人事業主および法人で、簡単にいうと、年間売上高が1000万円を超えていなければ免税事業者になるという、ゆるい条件しかありません。
免税事業者に税務調査に入っても、消費税を追徴することはできず、追徴税額は微々たるものに終わります。税務署員からすると、非常にコスパが悪いため、往々にしてスルーすることになります。
ただし、個人事業主にまったく入らないかというと、それも間違いです。
税務署には、個人課税部門があって、法人課税部門と同じくらいの人員がいます。毎年、必ず個人事業主には一定数以上の調査が行われます。それが目立たないのは、前述したように、個人事業主の数が多すぎることが影響しています。
件数の正確なデータは公表されていませんが、国税庁の直近の公表データから推測すると、個人事業主の申告件数の約1%に調査が入っているようです。個人事業主が税務調査に入られてしまうと、まず修正申告は免れません。前述のデータでは、調査に入られた個人事業主の約85%が何らかの修正申告をしています。
その原因は、個人事業主の場合、経費に占める「家事関連費」のウェートがどうしても高くなるからです。
税務署員が叩けば盛大にホコリが出る
家事関連費とは、個人用と事業用の両方で使っていて、切り離すことが困難な経費のことです。具体的には、家賃や水道光熱費、ガソリン代、携帯電話などの通信費などが該当します。
また、飲食店の場合、食材費を家事関連費として計上することは、“常套手段”です。店舗でお客に提供するために購入した食材を個人で使う食材として流用することは、それほど抵抗がない人が多いでしょう(飲食店が赤字でも事業を継続でき、生活も成り立つ要因といえます)。
本来、こうした費用を経費にするときは、個人用と仕事用とに区別して計上します。
経理上、区別して計上することを、「按分」と呼びます。この按分は、大体どんぶり勘定で行われるので、税務署員が叩けば盛大にホコリが出ることになります。
その結果、修正申告が必要になるのです。
もし、税務調査を担当した税務署員が“イイ人”だった場合、「本来は修正申告をしてもらうところですが、今回は“指導”ということにしておきます」などといって修正申告もスルーしてくれる可能性があります。