7~12月の調査の成績が、次の年の人事異動に反映されることになるので、この時期に調査に入られたら、①が濃厚だと思って対処してください。

逆に、1月から6月までの税務調査は“消化試合”です。②か③のパターンがほとんどで、税務署員も面倒に巻き込まれたくないと考えています。したがって、1月から6月の調査ならば、納税者の言い分もかなり聞いてくれるでしょう。

税務署に続々届く「タレコミ」の送り主は…

事前通知のアリ・ナシにかかわらず、税務調査が入るときには原因が存在します。銀行や税関、取引先など、普段より、税務署はいろいろなところから情報を集めているのです。

その中でも、情報源として意外に多いのが、「タレコミ」です。

じつは、税務署には、電話やメール、手紙、直接の訪問といった形で多くのタレコミによる情報が寄せられているのです。

いったい、誰がタレコミをしているのか? それがじつに多様で、儲けていることが面白くない同業者や、社長にパワハラなどを受けて会社を辞めた元従業員、社長と別れた元配偶者だったりします。

つまり、個人へのストレートな復讐という動機がタレコミの背景にあることが多いのです。身近な人を冷たくあしらうと、痛いしっぺ返しをくらうことになるということでしょう。

以前、こんなケースがありました。社長との折り合いが悪くなって会社を辞めた従業員が、その会社の裏帳簿を税務署に持ち込んだのです。

その裏帳簿は、2~3カ月分の帳簿で、それだけでも十分な証拠になるのですが、残りの期間の裏帳簿もあったほうが、重加算税をガッツリと取れます。

そこで、その元従業員に聞いてみたところ、残りの裏帳簿の隠し場所も教えてくれました。

ビジネスの悲劇
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「おそらく、査察の案件になる」税務署員の“説得”は効果絶大

さっそく、事前通知ナシで調査に入ったのですが、タレコミで教えてくれた場所には、すでに裏帳簿は見つかりません。おそらく、別の場所に移動させたか、焼却処分をしたのだろうと考えられます。

社長に問い質してみたものの、「裏帳簿なんて、あるわけないじゃないですか」と、簡単には口を割りません。知らぬ存ぜぬ、の一点張りです。

この程度はこちらも想定内ですから、本格的な“説得”に入ります。

そして、察しのよい人ならお気づきでしょうが、こちらには切り札があります。

「今回は、地方の税務署で処理できる金額じゃないので、おそらく、査察の案件になると思いますよ。あんまり大事にはしたくないんですけどね……」と、査察をちらつかせます。

前述のように、事前に査察が来るなんて教えるワケはないのですが、効果は絶大です。

「毎日、国税局に呼び出される」「地元の新聞やニュースで報道される」などと畳みかければ、通常は、口を割ることになります。そのときも、最終的に社長が折れました。