じつは、残りの期間の裏帳簿は最後まで見つからなかったのですが、2~3カ月分を1年に換算して、重加算税を徴収することに成功したのです。

従業員や配偶者は、日頃からくれぐれも大事にするようにしてください。

タレコミだけじゃない…税務署員がチェックする5つのポイント

タレコミなどの確実な情報がない場合、決算書や申告書をチェックするという正攻法で、調査対象を選びます。

決算書や申告書などのチェックにおいて、税務署員が特に注意するポイントは、おもに次の5点です。

①毎年黒字を計上し、売上げが増加していた
②例年と比べて、極端に売上げが増えた
③過去にないような経費の金額の増加があった
④決算期末の近辺で一気に経費が増えていた
⑤脱税を助けているような業者と取引があった

これらのポイントは、実務経験が豊富な税務署員であれば、決算書や申告書を見るだけでピンときます。そして、件数ノルマの消化のために訪問するケースを除いて、最悪、修正申告だけは持って帰ろうとするはずです。

したがって、売上げの増加や黒字などは仕方ありませんが、例年よりも多い経費を計上するときは気を付けてください。決算期末の時期にやれば、経費の水増しであることが簡単にバレてしまいます。

不動産業者に顧客
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税務署員は「個人事業主」の調査に甘いのか

個人で事業を行っている人は「個人事業主」に該当します。

税務署に「開業届」を提出している人を個人事業主であるという勘違いをしている人が少なくありませんが、開業届を出しているかどうかは関係ありません。雇用契約を結ばずに、業務委託契約や請負契約で仕事をしている人は、全員、個人事業主になります。フリーランスも個人事業主です。

なお、個人事業主は、事業主が1人で事業を行う場合だけでなく、家族や従業員を雇用し、複数のスタッフで仕事をしていても、法人でなければ個人事業主になります。代表的な例としては、法人化されていない家族経営の商店や飲食店、税理士事務所などです。

こうした個人事業主は、法人に比べると、めったに税務調査に入られません。ほぼスルーされます。

そのおもな理由は、売上げの規模が小さいことと、個人事業主の数が多く、全体に対して調査に入る件数の率が低くなることです。

税務署によっても多少の違いはあるので、あくまで目安として考えていただきたいのですが、年間売上高が1000万円以下の個人事業主は、まず税務調査の対象にならないでしょう。

売上高1000万円以下というのは、いわゆる消費税の免税事業者です。消費税は、私たちにとって最も身近な税金といえますが、「商品やサービスを購入した消費者が負担をし、販売をした事業者が納付する」という点で、税法上、他の税金とはかなり趣が異なります。