日中の懸け橋となる本になって欲しい
――『古代中国の24時間』、世間での反応はいかがでしょうか。
【柿沼】中央公論新社からは、漫画版の計画も持ち上がっています。別の出版社では図版をつくる話も進んでいます。ほかに海外では中国版・韓国版・台湾版が刊行予定です。やはり中国史を専門とする人間として、中国の人たちに自分の本が届くのはうれしく思います。
――中国では近年、中華民族の伝統をほこる風潮が強いですし、彼らがあこがれる秦漢時代の社会のリアルを伝える本は歓迎されそうです。
【柿沼】昨今はコロナ禍で海外旅行が難しいこともありますし、旅をするような感覚、異文化理解を深める感覚で、日本の読者にも中国の読者にも読んでもらいたいところです。「こんな日常があったんだ」とか、「これは今とかわらないな」といったふうにして、楽しんでもらえればうれしいです。
これに加えて、現在の「常識」は漢王朝だと通じないこともあり、私たちの「常識」は必ずしも長い歴史をもたない場合があるとか、別の「常識」がありうるのかもしれないといったふうにして、自らの固定観念をときほぐすのにご活用いただければ、さらにうれしいです。今年は日中国交50周年ですし、相互の理解が良い意味で深まるような、懸け橋となる本になればいいなと思いますね。