借り入れに頼る個人や自営業者は今後も増える

その結果として、住む場所を確保するために、さらには日々の生活や中小企業の運転資金のために、借り入れに頼らざるを得ない人が増えた。国際決済銀行(BIS)のデータによると2020年9月末に韓国家計部門の債務残高は国内総生産(GDP)の規模を上回り、2021年6月末時点ではGDP比105.8%に上昇した。

今後、韓国の雇用・所得環境の不安定感は高まり、所得減に直面する家計は増えるだろう。その主な要因として、コロナ禍によるサプライチェーンの混乱、世界的なインフレリスクの高まり、さらには不動産市況の悪化などによる中国経済の減速の鮮明化などがある。

12月24日に韓国銀行が公表した『2022年の金融政策(Monetary Policy for 2022)』によると、家計債務の増加ペースは過去のトレンドを上回っている。今後、借り入れに頼らざるを得ない個人や自営業者は増え、家計の債務問題は深刻化するだろう。家計の債務残高の増加を食い止めるために、韓国銀行は追加利上げを行わざるを得なくなっている。

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不動産価格が未来永劫上昇することはあり得ないが…

韓国では物価上昇のリスクも高まっている。その大きな要因は、世界の供給網=サプライチェーンの寸断だ。足許、デルタ株やオミクロン株による感染再拡大によってサプライチェーンの寸断が深刻化している。その結果、自動車などに使われる半導体などモノの不足の深刻化に加え、船員やコンテナ、タンカーの不足など物流コストも上昇している。当面、世界のサプライチェーンは混乱し、半導体や穀物、エネルギー資源、レアメタルなどの不足が続くだろう。異常気象もサプライチェーンの寸断を深刻化させている。

それによって、韓国の卸売物価は一段と上昇し、消費者物価も上昇する展開が想定される。物価上昇リスクに対抗するために、韓国銀行はこれまで以上にタカ派姿勢を鮮明に示し、複数回の追加利上げを実施するだろう。

また、不動産価格の上昇と家計債務残高の増加は、韓国の金融システムにとって無視できないリスクだ。資産価格が未来永劫上昇し続けることはない。どこかのタイミングで韓国の不動産価格は調整し、その後は家計の不良債権問題が深刻化する恐れがある。