鳥肌が立つ演技を見せた俳優が1位に

1位 玉置玲央『ひきこもり先生』(NHK)

ひきこもり歴21年の依田浩二(ヨーダくん)を演じたのだが、ダントツ素晴らしかった。もちろん、主演の佐藤二朗もコミュ障を演じさせたら俳優界で右に出る者はいない。が、玉置がスンッと右に出て並んだ感。

提供=有限会社ゴーチ・ブラザーズ

激昂して他人を見下す発言をしたかと思えば、社会に不慣れで「うぶ」な一面や繊細さをのぞかせる。言葉がうまく出せないもどかしさや凍結した心を見事に体現した。

回想シーンがなくとも、玉置は言葉と表情でヨーダくんの背景を浮かび上がらせた。父親との確執や自問自答を繰り返した21年間が見える瞬間が何度もあった。

しかも、余命宣告を受ける切ない役だ。怒りと絶望をぶちまける場面もあったが、その矛先は社会や世間だけでなく自身にも向いている、という複雑な感情表現。心奪われたよね。

記憶に残る演技のひとつに、「背景の可視化」があると思っている。

映像で見せていないのに、その演技で人となりや歩んできた人生、背負っているものが一瞬見える(気がする)。私自身、年に1回体験できるかできないか、というレアな感覚なのだが、遭遇できたときは本当に鳥肌が立つ。今年は玉置からいただきました。

特別功労賞は47歳でブレークした北村有起哉

さて、ベスト10とは別に、今後の活躍を大いに期待する若手に新人賞を授けるならば、山脇辰哉『きれいのくに』(NHK)に。あまりにも自然体で、とてつもなくうまかった。お調子者の男子高校生役だったが、汎用性は高く、さらにいろいろな顔(役)を観てみたいなと思った。

特別功労賞は北村有起哉『ムショぼけ』(朝日放送系)に。14年間刑務所にいた元極道の悲哀と不穏な精神状態を面白おかしく切なく演じた北村。

笑って泣けて驚いた。遅ればせながらNetflixの配信で一気見したのだが、北村の表情七変化とテンポのいい掛け合いは絶品。良質の社会派エンターテインメントだったと断言しておく。

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