短期ではなく「圧倒的長期」でものを見る

なぜ、そんなことができるのでしょうか?

理由は、1)短期ではなく長期でものを見ていることと、2)株券ではなく事業そのものに投資する、という方針を貫いているからです。

2011年夏、バフェットはアメリカの大手銀行バンク・オブ・アメリカの優先株に50億ドルを投資したものの、株価はその後も下がり続けました。そこで、「(株価が下がり続けている会社に投資したことを)後悔していませんか」と尋ねる『日経ヴェリタス』の記者にこう答えました。「長期の視点で投資しているのです。今日や明日、来月に株価が上がろうが下がろうが、私にはどうでもいいのです。バンク・オブ・アメリカが5年後、10年後にどうなるかが大切なのです」

バフェットによると、同社には解決すべき問題がいくつもあるものの、それは数カ月で解決できるようなものではなく、解決に5~10年はかかるといいます。そのためにCEOは素晴らしい仕事をしているし、問題があったとしても同社のアメリカ最大規模の預金量や事業基盤は魅力的でとても良好なのだから、目先のことに一喜一憂する必要はないというのが当時のバフェットの言い分でした。

バフェットの言葉通り、バークシャー・ハザウェイが公開している「上場株の保有上位15銘柄(2020年12月末時点)」の第2位には、今もバンク・オブ・アメリカが載っています。そして今、その保有額は実に313億ドルに達しています。

成長し続けられる企業にだけ投資する

バフェットにとって投資するに値する企業というのは、成長し続ける企業です。

そしてこの成長は「ほんの束の間の成長」ではなく、可能な限り長く続くものであることが肝心なのです。

企業は、たとえ売上が下がっていても、または伸び悩んでいる状況でも、一度限りの好決算を出すことができます。大胆なリストラを行うとか、持っている資産を売却するといった方法を使えば、株価を一時的に押し上げるくらいの利益を出すことはできます。

あるいは、ブームといっていいほどの「追い風」に乗って、売上や利益を大きく伸ばす企業もあります。たとえば、ゲーム業界のように大ヒット製品が出ることで、売上を大きく伸ばしたものの、ブームが去った途端に低迷したり、メーカーであれば大量の在庫を抱えて経営が危機に陥ったりするというのもよくあることです。