すべての判断は「自分がどうしたいか」で決める

自己本位とは、「自分はどう思うのか、自分はどうしたいのか」というように「自分軸」で物事を捉え、そして行動していくこと。「相手がどう思うか、相手は何をしてほしいか」というように「他人軸」で物事を捉えて行動する生き方とは対照的な態度です。

ライフハックアニメーション『天才はみんな「鈍感」さん ありのままの私を大切にした偉人の話』(KADOKAWA)

人一倍真面目で努力家、一方で人一倍神経質で気持ちの上げ下げも激しかった漱石は、人間関係においては多くの苦労を経験したようです。

自己中心的になることと、自己本位になることは似ているようで大きく異なります。

自己中心とは他人の存在を無視し自分を中心に考えること。自己本位とはあくまでも他者の存在を前提に、その上で「自分はどうなのか」を問う態度であると言えます。

他人に振り回されて自分を見失うくらいなら、揺らぐことのない確固たる自分軸を構え、その上で他者との関係を築いていくことが大切です。

時代は違えども、「自分はどう思うのか」「自分はどうしたいのか」をしっかり考え、まずはそこを基軸にする態度は大切なのです。

一説によると漱石は被害妄想が強く、周りの人が自分の悪口を言っているのではないかとよく気にしていたようです。また、音にも敏感で、特に電話のベルの音が嫌いだったそう。敏感な感性の持ち主であった漱石は、それだけ他人にどう思われるかを人一倍気にしていたのかもしれません。

だからこそ、「自己本位」という言葉を強く意識し、そうした悩みを乗り越えていったのでしょう。

漱石も当時はストレスから「自分を見失っていた」

学業で優秀だった漱石は、国からの支援を受けてイギリス留学に行くなど多くの人から大きな期待を持たれる人物でした。

時代は明治維新後、世界の激動を背景に日本も列国と肩を並べられる存在になろうと皆が努力する時代。漱石のイギリス留学は日本という一国を背負っていたと言っても過言ではないでしょう。

ただ、そんな大きすぎる期待からか、漱石は尋常ではないほどのプレッシャーを抱えることになります。当然、プレッシャーからくるストレスも過剰でした。気づいた時には、他人からの期待に押しつぶされ自分というものを見失ってしまっていたことでしょう。